※リクエスト:雰囲気がどうこうしなくても不意にキスやボディタッチをされる話



今日は珍しくチームのみんなが揃ってアジトにいた。仕事で殺し帰りの奴や、これから仕事の奴、今日は何もないからと顔を出しに来た奴、ちなみに私は一番最後である。リゾットの座る1人掛けのソファーの横、2人掛けのソファーに座り持ってきた本を開いたところで隣でリゾットが立ち上がった。
「出かけるの?」
「…いや」
普段から見上げるタイプの大柄な男に座りながら目線を向けるのは大変だ。背もたれに首を預けるように見上げて声をかければリゾットは私の目の前を通り右隣の空いている方に座り直した。
「?」
なんでわざわざ移動したんだろう?本に目を戻せば、肩に少しだけ寄り掛かかる重みを感じた。あら珍しい、今日はそういう気分らしい。付き合って随分経つけど、たまにこういうスイッチが急に入るのよねぇ。肩にかかる重みに口元を緩め本の活字を読んでいると、ギアッチョがテーブルの近くにやってきて先程リゾットが座っていた1人掛けのソファーに座った。
「…ソレそんなおもしれーか?」
「ん…?いや?拷問に役に立つかと思って買ってきた心理学の本だからタメにはなるけど、面白くはないよ?」
「あっそ、ニヤニヤしてるからおもしれーのかと思った」
そう言ってギアッチョは机に置いたPCに目を戻した。ニヤニヤしていたのか、恥ずかしいな。少しだけ反省をしていたら、隣からくつくつ小さく喉で笑う声が聞こえて、顔に熱が集まった。…確信犯だ、リゾットってば分かっていてやっているな。チラリと彼を見れば、表情を変えずに何やら資料を見ていている。それでもぴったりとリゾットは私にくっついていて、何がしたいんだか本当にわからない。

暫くそのまま本を読んでいたら、彼が膝の上に置いていた右手に自分の手を重ねてきた。一瞬どきっと心臓が音を立てたが、先程からそういう気分なのだろうから気にせず本に目を向けたままにしていた。
「…そんなに見ないでよ」
「そんなに見ていたか?」
「見てた」
「すまない」
じっと視線を感じて渋々文字から目を離して彼を見れば、黒い瞳が私を見ていてきょとんとした顔をする。これはわざとではなくて本当に自覚がなく見ていたのだろう、素直に謝るくせに合った視線を外そうとはしない。徐々に近寄ってきた顔を疑問に思いながら見つめていたら、ちゅ、と音を立てて唇に触れられた。
「うん?」
「て、テメェらそういうのは家でやれ!」
これは予想外。びっくりして変な声を出してしまったが、それよりも横から聞こえる怒号の方がすごい。ギアッチョの頬が赤く染まりながらこちらを指差す間にもリゾットは気にしてないように私の肩を抱き寄せて額にキスをした。状況がわからずに瞬きをすれば、完全にキレた様子のギアッチョがぎゃんぎゃん何かを言っているけどじっと私を見つめるリゾットから目が話せない。
「今日はどうしたの?」
「なんとなくだ」
「ふーん」
「いや!ふーん、じゃねェよ!!ナマエもなんとか言え!!」
「うるさいギアッチョ、私ら付き合ってるしリゾットがしたいならすればいいじゃん」
「そういうことじゃあねェだろォが!!!」
ぎゃんぎゃんうるさいなぁ。ギアッチョが大きい声を上げるのも気にせずリゾットは私を座ったまま引き寄せて膝の上に置いた。
「…重くない?」
「問題ない」
「そう、ならいいや」
後ろから抱きかかえられる体勢は中々恥ずかしいものはあるが、ギアッチョにも言った通り最悪すけべな触り方さえしてこなければ好きにすればいいと思う。遠慮なく鍛えられた筋肉質な身体に寄りかかり、本に視線を移せばギアッチョに配慮したのか後ろから音を立てずに何度も頬や首にキスをしてきた。まるで大型犬みたい、そう思って「ふふ」と笑いが漏れれば機嫌を良くしたのかぎゅっと私を抱きかかえる手に力が入った。

「…どういう状況だァ?これは」
大広間であるこの部屋に入ってきたプロシュートが私とリゾットの体勢を見て怪訝そうに口元を引くつかせる。見せつけられている状態になっていたギアッチョが「俺もわっかんねぇーよ!」とキレた。
「リゾットがそういう気分っぽい」
「ヤることヤりゃあリゾットも満足するだろ、どっかで1発ヌいてやれ」
「プロシュートとリゾットを一緒にしないで」
下品な言い方をされてギロッと睨めば、鼻で笑われた。後ろで私を抱いていたリゾットがプロシュートを見て「そういうのじゃあない」と言えば、何度か瞬きをして「わっかんねーな」と言い空いていたギアッチョと向き合う形で1人掛けのソファーに座った。

「なんとなく触りたくなるだろう?」
「ああ?触りたい=ヤりてェだろ」
全く真逆な感性で話す2人がお互い目を合わせて首を傾げる。会話を聴きながらリゾットがあくまでも私と『今』シたいワケではないことがわかったので、安心して引っ付いていよう。
「…オメーの考えてることはわかんねーな」
「そうだな」
少し睨み合って2人の中で決着がついたようだ。プロシュートはタバコに火をつけて、リゾットはそのまま私の首筋にキスをしてから首筋に顔を埋めた。くすぐったくも感じるけど、その可愛い行為に免じて我慢してこのつまらない心理学の本を見続けようと思う。