「ヴァンガードにアタック。ヴェルヘミーナのGB4。前列のリア全てにクリティカルプラス1、パワープラス5000。名前さん、ちょっと思ったことがあるんですけど」
「なあに、トコハちゃん。うーん、30000要求きっついなあ……」
「名前さんってお綺麗ですよね」
「どうしたの、そんな唐突に。うん、ガードするね」
「ふと思って、言いたくなって。ヴェルヘミーナでヴァンガードにアタック」
「ノーガード。ありがとう、褒めても何も出ないけどね。」
「トリプルドライブ。ノートリガーです。」

 淡々とファイトを進めつつ、同時に会話もこなす二人。町の中心から少し外れたこの公園は人も少なく落ち着いた雰囲気で、休日に訪れるには最適の場所だろう。とは言っても二人が行っているのはいつも通りのヴァンガードファイトなのだが。
「ケラでヴァンガードにアタック。名前さんの美の秘訣が、ちょっとだけ知りたいなって」
「そんなもの、特にないよ。アントニオで完全ガード」
「……そうですか。ターンエンドです」
 トコハのターンは終了し、名前のターンに移る。そんなものはないと言った名前の目が一瞬だけ伏せられたのが気になったが全力のアタックを防がれてしまった今、他のことに気を取られている余裕は無い。
「スタンドアンドドロー。ストライドジェネレーション」


 勝負は名前の勝利で終わった。トリガー運の差ではあるが勝利は勝利である。これで二人の戦績は46勝9敗で未だトコハが大差をつけて勝ち越している状況だが、それがほんの少しだけ縮まった。
 二人が初めて会った頃の名前はカードゲームのカの字を知っているか知らないかという程度の初心者だったが、ハイメやトコハと過ごすうちにすっかりのめり込み、今では殆どファイト漬けの日々を送っている。
「楽しかったです、次は負けませんよ!」
「うん、私も。勝ったの久しぶりだからすっごく嬉しい」
 ベンチに佇む二人を、公園ののどかな雰囲気が包み込む。このカードが活躍してくれた、あの時トリガーが引けていれば……などファイト展開を振り返りつつ他愛もない話をしていると、トコハはふと名前に見つめられていることに気がついた。
「名前さん?」
「私はね、トコハちゃんの方が綺麗だと思うよ」
「ううん……私って別に名前さんみたくお化粧とか出来ないし、特別見た目を気にしてる訳じゃないし……その、名前さんの隣にいていいのかなって」
「そんなの、気にしなくていいのに」
 歳上の同性に憧れる高校生というものは可愛らしいものである。妹が出来たような感覚を覚え、なんとなくむず痒いような不思議な気分だ。
 名字名前にとって安城トコハは妹。姉のように慕い、無邪気に手を握ってくれる妹。そして名前の幼馴染みミゲル・トルレスが、恋したかもしれない女である。

「でも、トコハちゃんがそう言うなら私が教えようか?」
「いいんですか?」
「断る理由なんてないよ。それに、将来のために覚えてて損は無いから」
 ほんの少しだが名前の言葉に違和感を感じたトコハ。思考を巡らせてもその理由は分からず、善は急げとスッと立ち上がった名前に導かれるまま公園を後にするのだった。
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