「アンタは遠慮なんて求めてないだろうから言うけど……デッキ、もう少し考えた方がいいよ」
「はい……」
「今まではトライアルデッキを改造したやつを使ってたんだっけ。ま、初めて一から組んだにしては上等なんじゃない?」
「ありがとうございます、戸倉さん」
「初めてにしてはってだけで、実用性で言ったらまだまだ改善するべきところはあるよ。アンタはカムイやナオキと違って、ファイトすればどうにかなるってタイプじゃないんだからさ。ゆっくり考えてみな」
 そう言ってグレードや効果毎に並べられたカード達をひとまとめにし、名前に手渡した。今日は休日だというのに客は少なく、これならミサキにデッキの調整を手伝って貰えると思ったのだが、ファイトするまでもなく調整不足だと言われてしまった。

「デッキの気になったところとかメモするから、少し待ってな」
「すみません……! わざわざそんなことまでしてもらって……」
「アタシがやりたいだけだから、そんな顔しないで。ほら、座った座った」
 そう急かされた名前は、空いている椅子に座りデッキをテーブルに並べ始める。主軸にするユニットは決まっているものの、他にどのユニットを採用するかがいまいち決めきれていなかった。すぐにでも組み替えられるようにと持ってきていたユニットと、先程まで使っていた二つを見比べてみても、デッキがより良くなるイメージが浮かんでこない。ネオネクタールのユニット達が悪い訳ではないのだが……名前はまだ始めて数ヵ月程度のファイター故に所持しているユニットの種類自体が少なく「やはり手持ちのカードだけでは限界があるか……」と考えていたところ、ミサキに声をかけられる。
「こっち」
「……?」
 そう言われてレジの方に近づいてみると、数日前に発売したばかりのブースターパックが目に入る。ミサキの視線がそのブースターパックの方に向いていることにすぐ気がついた。
「一応聞きますが、収録クランは……」
「ネオネクタール、入ってるよ」
「……」


「1BOXね、毎度あり」
「1万円でお願いします……」
「はいこれ、後おつりもね」
「これ、さっき言ってたメモですか? 凄い……! 問題点が簡潔に分かりやすくまとめてある……!!」
 そのメモはデッキの問題点が初心者の名前にも分かるようにまとめられていた。「このユニットが……!」や「なるほど……」などと独り言を呟いている様子をミサキは呆れたように見つめる。
 そんな様子も微笑ましいものだが、メモに目を奪われおつりを一向に受け取ろうとしない名前に痺れを切らしたミサキは「おつり!」と声を荒らげる。カルトンに少し乱暴な手つきで1000円札や小銭が乗せられ、バシッ!と音が鳴った。
「すす、すみません……! おつりちゃんと受け取りました……」
 おつりをちゃんと受け取ったのを見ると、眉間に寄っていた皺は無くなり、表情も和らいだ。
「ねえ名前」
「戸倉さん……?」
「アンタがアタシの書いたこれを見てデッキを組み直したら、またウチに来な」
「は、はい……!」
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