※学パロで波多野の名前が波多野亮祐です、夢主は波多野のことあだ名で呼んでる


七月、梅雨も明けて暑さが段々と厳しくなるこの季節。こんなじめじめとした暑さで名前はクーラーの効いたリビングから一切動きたくないというのに、テレビでは若い気象予報士が屋外で今年の夏の暑さについて初老の男性と共に明るく喋っている。
興味の無い情報を垂れ流し続けるニュース番組を一瞥し、自分に覆い被さるようにして抱きつく青年を睨む。

「亮ちゃん、あっついよ」
「別にいいだろ。お前の肌、冷たくて気持ちいいんだよ」
「亮ちゃんがよくても私は暑いの〜…」
体質なのだろうか、名前の肌は蒸し暑いこの季節でも少しひんやりとしていた。それに対して青年はクーラーの効いた室内だというのにほんの少し汗を滲ませていた。
「相変わらず夏でも肌冷たいな」
「私が冷たいんじゃなくて亮ちゃんが子供体温なんだよ、多分」
「うるせえ」
「そんな暑いならエアコンの温度下げなよ」
「…お前本当わかってねーな」
きょとんとした顔で青年の目を覗き込む。言葉の意味が一瞬では判らず首をかしげながら考える。次第に名前の顔は全ての辻褄が合ったような、「そうか」とハッとした表情になる。意味を理解したが暑いものは暑いというのが本音だ。
おもむろにエアコンのリモコンを手に取り、比較的高めに設定してあった温度を三度下げる。
「亮ちゃん頭いい癖におばかだね!」
「ドヤ顔するな」
「涼しくなったからくっついてていいよ。あ、麦茶とって。テーブルの上にあるから」
「ほれ」
「冷たっ!ちょっと亮ちゃん……!」
頬に感じる冷たさに思わず声をあげて抗議する。青年の方を向けばしたり顔でこちらを見ており、名前は眉間に皺を寄せる。
「お前が馬鹿にするからだよ」
「むっ…まあいいや、ありがと」
冷えた麦茶が喉を通るとその冷たさが全身に行き渡るように思う。コップの中で氷がからんと音をたてる。
二人は夏休みの課題を済ませるために集まったのだが、大半は午前中に終わらせてしまった。昼食を共にした後、いまいちやる気も湧かずソファーで駄弁っているという訳だ。
「作文とかつまんない、亮ちゃん私の代わりに書いてよ」
「俺に頼らず自分でやれよな…」
「そう言うと思った!」
テレビでは有名な菓子メーカーのこの夏の新作アイスのCMが流れている。若い俳優と女優が高校生に扮し、二個セットのそのアイスを分けて食べながら下校するという内容だ。
「『瞬くん!半分こしよ!』」
「何それ、あの女優の物真似?」
「うん、似てた?」
「全然」
「このCMのカップルは随分とお暑いなあ〜。でもアイスは美味しそう!確か近くのコンビニに売ってたような…」
そう言いチラチラと青年の方を見る。その視線の意味に気付いたのか、呆れ顔でため息を吐く。大方「私はここから動きたくないから亮ちゃん買ってきて」ということだろう。ここから動きたくないのは自分だって同じだと文句を言ってやりたい気分だ。
「断る」
「まだ何も言ってないし…」
「どうせ『亮ちゃん買ってきて』だろ」
「亮ちゃんエスパー!凄い!」
「あんな風に見つめられてたら誰でも分かる」
「うーん、それならじゃんけんで負けた方が買ってくるのは?」
「別に俺はアイスなんて興味ないし」
「ですよね〜…すみません…」
あからさまに落ち込んだ様子に少し罪悪感を覚えるが、面倒くさいからと人をパシリに行かせようとしたことを思い出し罪悪感が消える。
「なら一人で買ってこよ、ちょっとそこのコンビニ行ってくるね」
「二人で行くって考えは無いのかよ」
「あ、うん…」

「外あっつ!自転車で来ればよかったかも…」
「あと少しなんだから我慢しろ」
「ん〜…そうだねえ…」
コンビニが見えた途端一人で駆け出した名前を呆れたように見つめる、置いてけぼりにされるのも癪なので小走りで追いかける。
駆け込むようにして入った店内は冷房が効いており、炎天下に晒されていた体に心地がいい。他の物には目もくれず一目散にアイスの元へ向かう名前のその食い意地にはある種の尊敬の念すら浮かぶ。
「あったか?」
「あったけど一個だ…」
「食べるのは名前だけだろ、一個じゃ駄目なのか?」
「いや、付き合わせちゃったお詫びとして亮ちゃんに一個買おうかなって思ったんだけど…」
「別にそんなのいらねーよ」
「そっか、付き合ってくれてありがとね?」
「おう」
平日の昼過ぎということもあり店内はそこまで混んでおらず会計はスムーズに済んだ。結局、アイス以外にも菓子類を数個買い、帰路につく。
がさがさと袋を漁る名前に「待ちきれないのか」と問うが、返ってきた答えは否である。
「家に帰るまでに溶けちゃいそうじゃない?」
「この暑さなら完全とまではいかなくても、結構溶けそうだな」
「だから帰る途中食べちゃおうかなって!」
青年はこの光景に何故か既視感を感じた。その理由は家を出る前にテレビで流れていた先程買ったアイスのCMからだ。

『瞬くん!このアイス半分こしよ!』
『おっ、くれるのか!さんきゅ』
『美味しいね、このアイス』
『そうだな』
『ねえ瞬くん、この手……』
『手繋ぐくらいいいだろ!俺達、こ、恋人なんだし……』

というようなCMだったはず。下校途中ではないものの、恋人関係にある男女が一緒にアイスを買うところまでは一緒だ。
隣を見ればアイスのパッケージを開けるのに悪戦苦闘する名前がいる。
「ほら、貸せ」
「流石だね、亮ちゃんありがとう〜。ねっ、これ半分こしよ!」
先程感じていた既視感がまた更に強くなる。ただ、さっき店内で聞いた言葉から察するにCMの内容が何であれ名前はもうひとつのアイスを青年に渡していただろう。その顔を見てもCMを意識しているとは到底思えない。
「ほーら!これ受け取って!」
「そこまで言うなら、貰う」
「んんっ〜〜っ!冷たい!美味しい!」
「甘過ぎずで美味い、そこそこ高いだけのことはある」

「これでこそ暑い中出掛けた甲斐があるってもんだね!あれ、亮ちゃんが手繋ぐなんて珍しい」
「お前の手冷たいし。それに俺達、恋人なんだから手を繋いだっていいだろ?」
「あっ、」


タイトルはドイツの諺から
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