部屋に駆け込むと、瞳から大粒の涙が溢れた。
あの冷たい瞳に見つめられていたら、隠していた気持ちがどんどん剥がれていきそうで。大切にしまっていた心が、どんどん壊れていきそうで。…とても耐えられなかった。


『知らねェよ、こんな女』


低く冷たい声が耳にこびり付いて離れない。何で彼はあんなこと言ったんだろう。別に彼女ぶったりなんてしないのに。十四郎に変なこと言ったりなんてしないのに。ちゃんと、自分の立場を弁えているつもりだったのに。


『初めてお目見えする方ですもの』


私だって、同じか。ひどいじゃないですか、なんて笑って流せたら、きっと彼も笑ってくれたかもしれない。なんて可愛くない女なんだろう。何で彼のこととなると、素直になれなくなってしまうんだろう。強がったって、何も得られるものなんてないのに。

その時、階段を音を立てて上がる音が聞こえた。
…まさか、なんて思う時間もなく、すぐに戸を乱暴に殴る音が部屋に響く。すぐに涙を拭って性懲りも無く、私は扉へ駆け寄った。戸を開けた先に立っていた銀時は、凍てつくような表情で私を見つめている。何も言えずに見上げる私の手を掴み、部屋へと押し入る。


「万事屋さ、…」


掴まれた手首が痛くて、その後ろ姿に声をかけても、振り向いてくれるわけもない。何か怒っているようなその雰囲気にそれ以上声を出せない。

思い切り手を引かれ、寝室の畳の上と押し倒される。銀時は据わった瞳で私を見つめたかと思うと、勢いよく寝間着の襟を広げて、胸に顔を埋めた。


「や、っ…」


膨らみを文字通り鷲掴みにされて、私は思わず眉を顰める。鎖骨あたりにキスを落としたかと思えば、そこから一瞬痛みを感じた。胸に何度かそれを施されたところで、私は彼の行動の意味をやっと理解した。銀時の口元が首筋に向かった時、私はやっと反抗をする。さすがにそんなところにキスマークをされては、仕事に支障が出てしまう。


「やめ、…待っ、やめて」

「…あのマヨヤローにバレたらマズイってか？」


…マヨ？なんでここで十四郎が出てくるの？違うのに。嫌々と首を振る私に、銀時は舌打ちをして私の首元に噛み付いた。空いた手は変わらずに、膨らみを揉みしだくもんだから、私の口から吐息が漏れてしまう。


「やっ…いや、あ、あっ」


尖った頂を口に含んで、口内でねっとりと転がすその動作に、私の背筋がピンと反る。それでも、浮かんだ小さな疑問を拭えずに、絶えず襲いくる快感にどうにか抗おうと、奥歯を噛み締める。


「…万事屋さ、あ、っ何で…」

「…あ？」

「何で…っ、キスしてくれないんですか…っ」


震えた声を絞り出すと、目尻から涙が溢れた。そんな私を捉えても、銀時は少しも動じずに鼻で笑った。


「俺のことは万事屋さんなんて呼ぶくせに、あいつのことは名前で呼んでんだな」


違う、と否定する間もなく、銀時は自身の指を私の口へと突っ込んだ。溢れる涙も拭えずにそれを受け入れるしかなかった。
…何で、何でこんなことするの。
悲しみや切なさ、色んな感情が涙に変わって流れ出す。太ももに銀時の指先が触れて、私は更に首を大きく振る。全くと言っていいほど濡れていないそこに乱暴に指を沈められ、痛みで思わず眉を顰める。


「んー、んッ！！…っ」


どんなに乱暴に触られたところで、相手が銀時とあらば、意思に反して私の身体は無情にも反応してしまう。それに気づいた銀時は、また嘲笑して私を見下ろす。


「…んっと、淫乱だな、…誰でもいいのかよ」


その言葉に私はカッと顔が赤くなった気がした。瞳から更に涙が溢れたところで、銀時のそそり立ったそれが一気に私の中へ侵入した。





prev / next
bookmark

[ back to main ]
[ back to top ]