Dolce | ナノ


▼ My precious hun. / 坂田銀時 / 葵様request



「ねぇねぇ、救護班どこにいるか知ってる?」

「あ、なまえさん。怪我でもしたんですか?」

「全然大したことないんだけどさっき転んで肘擦りむいちゃったんだ」

「大丈夫ですか?僕、包帯持っ…」

「オイ!!!あの、なまえさん、銀時さんが救急箱持ってますよ。ですから銀時さんのところへ」

「…あ、そうだったそうだった。銀時さんが持ってるんだった、アハハ…」

「…?そうなの?」


時は攘夷戦争真っ只中。昨夜敵陣への奇襲を成功させた私たちは束の間の休息を取っていた。前途したように全く関係のないことで怪我をしてしまった私は少しの消毒液と包帯をもらいに救護班を探していたのだが見当たらない。見当たらないどころか救急箱を持っているのが銀時とはどういうことだ。きょろきょろと辺りを見渡すと小太郎や辰馬としゃべっていた銀時を見つけて駆け寄った。


「銀時ぃー!」

「なんだよ、んなでけー声出さなくたって聞こえてるよ」

「ちょっと怪我しちゃったんだけど、みんな銀時が救急箱持ってるって…」

「は?!何、どこ怪我したんだよ!?」


けだるそうな顔を向けたかと思えば、くわっと眉を釣り上げて私の肩を掴む銀時に驚きながらも、怪我をした肘をちょいちょいと指差せば、銀時は安堵したようにはぁっとため息を落とす。大急ぎで懐を漁り消毒液と包帯を取り出して、怪我をした場所を手当し出す銀時を私は思わず止めに入った。


「ちょ、銀時。自分でできるから大丈夫だよ」

「っせーよ、傷が残ったらどーすんだ」

「ただのかすり傷じゃん」

「全く…お前は昔からなまえに対して過保護がすぎるぞ、銀時」

「っせー、ヅラ。黙っとけ」

「ヅラじゃない!か」

「小太郎!もっと言ってやって!いつまでも子ども扱いするなって!」

「なまえ、最後まで言わせてくれない?」

「アハハハハ!金時ィ、おまんはまっことわかりやすいのう」

「テメーも黙ってろ」

「なに、辰馬、何の話?」

「なまえ、知らん方がええこともあるぜよ、アハハハハ」


ふーん、と唸れば得意げにほらよ、とツギハギに巻かれた包帯を見せつけられて、私は大袈裟に眉を顰めた。


「何これ!銀時包帯巻くのめっちゃ下手っぴじゃん!」

「ハァ?これのどこが下手っぴなんだよ!?」

「だって見てコレ!怪我したところが直接包帯に当たってるよ!」

「細けェこと気にすんなよ、お前が頼んだんだろ?」

「頼んでないよ!銀時が勝手に巻いたんじゃん!もー、これじゃ包帯ダメになっちゃうじゃん」


バカバカ、と銀時の胸をポカポカと叩けばむうっと口元を尖らせた銀時にひょいっと腕を掴まれた私は咄嗟に銀時を見上げた。…せっかくやってもらったのに、怒らせちゃったかな。なんて心配はそのいたずらな表情を見ればすぐに解消された。片方の腕を掴まれたまま、突然銀時のもう片手が私の膝裏を担ぎ上げお姫様抱っこのような形で抱きかかえられた。


「きゃ!銀時、待って、降ろして!」

「悪い子にはお仕置きが必要だな、なまえちゃんよォ」

「待って、やだやだ!……いやぁぁぁぁあ!!」


銀時は私を抱き上げたまま皆が休憩する中を全速力で駆け回った。昔から銀時は私にお仕置きと言う名の意地悪をするときは、いつもこれだ。子供騙しだと思うでしょ?!とんでもないスピードで走り回るからめちゃくちゃ怖いんだよ!私高いところ苦手なのに!銀時の首にしがみつきながら悲鳴を上げてると、オイ!と不機嫌そうな声が聞こえて、ようやく銀時の足が止まった。


「晋助!」

「オイ銀時。テメーなまえが嫌がってんのわかんねェのか」

「これのどこが嫌がってんだよ?ただの馴れ合いじゃねーか。お前の目は節穴か?あァ?」


私をお姫様抱っこしたまま晋助に詰め寄る銀時の頬をむぎゅっと摘むと、ようやく私を地面に下ろした。すかさず晋助の後ろに隠れて銀時に舌を出せば、晋助はなぜか勝ち誇ったように微笑んでいる。


「なまえ、そいつに触れるとチビがうつんぞ」

「こいつに触れると天パが移るから気を付けろ」

「えーどっちもやだ!」

「なまえちゃん?いい子だからこっちおいで?ね?ね?」

「なまえ、向こうに花畑があったんだ。見に行かねェか」

「お前何そのツラで花とか言ってんの?お前みてーな仏頂面が花なんか見に行ったら驚いて枯れちまうだろーが」

「なんだと」

「もー二人とも…」

「なまえー!飯が出来たぞー!」


後ろから小太郎と辰馬が手招きをして私を呼んでいる。はーい、と二人の元に駆け寄っていく私を銀時と晋助はぽかんとしたまま見つめていた。そしてすぐに「邪魔すんじゃねーよ低杉!」「テメーこそ邪魔すんじゃねェ」といがみ合う二人の声が聞こえた気がした。



・・・・・



「金時ィ、わしにもその抱き枕ば使わせちゃくれんかのう」

「銀時、坂本の言う通りだ。この戦場で唯一のオアシスを独り占めするなど卑怯だぞ」

「うるせーよ」


静かに寝息を立てているなまえを傍らに抱き寄せて、同じように寝そべっている俺にヅラと辰馬が野次を飛ばす。ひらひらと払うように手を振れば、呆れたような二人のため息が聞こえた。うるさい二人の声から逃げるように、んん、と声を漏らしながら俺の胸に顔を埋めるなまえが可愛いったらありゃしねェ。


「他のものがなまえに接触するのを牽制しているそうじゃないか。皆お前が怖くてなまえと満足に話せないと怯えていたぞ」

「わしも聞いたぜよ!『なまえさんと話してたら物陰から物凄い顔で銀時さんが睨んでた』って言うとったのう。男の嫉妬ちゅうんは見苦しいぞ金時」

「知らねーよ、あいつらが下心全開でこいつのこと見てっから注意しただけだよ」

「…じゃあテメーのその下心全開の腕を叩っ斬っても文句はねェよな?銀時」

「高杉!」


なまえの腰に手を回す俺の腕に、刀を伸ばす高杉をヅラや辰馬が慌てて止めに入った。チラッと高杉を見上げて、すぐにまたなまえの頭に顔を埋めれば高杉の舌打ちをする音が聞こえた。


「なんじゃ高杉。おまんもなまえを抱いて眠りたいんか?普段すかしとうおまんもなまえには目尻下がっとるきにのう」

「うるせェ、早く寝ろ。それとも永遠の眠りにつきてェか」

「それならなまえに聞いてみればいいだろう。誰と一緒に眠りたいかをな」

「ヅラの言う通りじゃ!金時、なまえに聞いてみぃ」


あァ?何こいつら俺に張り合おーとしてんの?バカなの?死ぬの?なまえは俺と一緒に寝てェに決まってんだろ、だから毎晩俺んとこ来て何も言わず隣で寝てんだろ。ったくしょーがねェなァ。なまえを本当に起こしてしまっては可哀想だと、こそっと耳元で囁きかけてみる。


「なまえちゃ〜ん?なまえちゃんは誰と一緒に寝たいのかなぁ〜?」

「銀時、やめとけよ。なまえ寝てんだろーが…」

「…んー」


眠っているなまえが俺らの無意味な質問に答えてくれるはずもないと、俺は裏声を出す準備をしていた。「銀時」となまえの声に似せて発しようとした時、なまえの小さな返事に俺らはただ黙ることしかできなかった。


「………松陽先生…」


思わずその顔を覗き込めば、しっかりと瞼は閉じられているし、静かな呼吸の音が聞こえる。偶然の産物にしては、この不毛な争いを終結させるには充分すぎるほどの一言だった。


「…松陽先生っちゅうんは、おまんらの…」

「…松陽先生には敵うまい」

「…チッ、よりにもよって先生かよ」


解散解散、と言わんばかりに去っていく三人を尻目に、俺はなまえをいっぱいに抱き寄せて誰にも気付かれないようにその額に唇を合わせた。

…なまえは松陽によく懐いていたし、松陽もなまえをよく可愛がっていた。こんな小さな体で俺らについて来て本当は泣きたいときだってあるだろうに、決してこいつは俺らに泣き言なんて言った試しはねェ。それどころか肝っ玉母ちゃんの如く俺らを叱咤したり、時にはそれこそ本当にオアシスのように俺らを癒したり。こいつからは本当にたくさんのものをもらいすぎてる。


「大丈夫だ、なまえ。何があっても俺がお前を護ってやるから…」


お前は、俺の…俺だけの大切なモノなんだから。




My precious hun.
(こいつだけは誰にも渡さねェ)


-end-




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葵様\(^o^)/お待たせいたしましたー♪
この度はリクエストありがとうございます!
もう本当に幼馴染ストーリー描くの大好きで仕方がありません(笑)
大人気なく独占欲を撒き散らす銀ちゃんが可愛くって可愛くって…(^_-)

勝手ながらヒロインは逆ハーなイメージがありましたのでこのような形で執筆させていただきました♪
是非また機会があればリクエストください(^−^) というか私も勝手に書きます!(笑)

いつも温かいメッセージありがとうございます!
これからもよろしくお願いいたします!

4/30 reina.




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