Dolce | ナノ


▼ My sweet darl. / 坂田銀時 / 葵様request



「なまえ〜ちゃんっ!」

「うぎゃっ!」


江戸にやってきて数ヶ月。幼馴染兼初恋の相手、坂田銀時と再会を果たし、十数年来の恋をようやく実らせることができた私は、かぶき町の外れに部屋を借りてひもじいながらも何とかそれなりの日々を送っていた。こうしてたまにやってくる銀時と、何とも甘酸っぱい恋人生活を送っている。…そんな最近の私の悩みといえば。


「なァ、今日泊まってってい?」

「…うん、いいけど。ていうか銀時、…近くない?」


台所に立つ私を後ろから抱きすくめながら、そぉ?とすっとぼけた声をあげる銀時。はたまた夕食を食べ終えて、ふぅっと一息ついてテレビを見ていた私の横にぴったりくっつきながら、私の顔を凝視している銀時。


「…な、何?」

「んー?別にィ?」


ニヤニヤと含み笑いを浮かべながら、私の表情を伺うように私の顔を覗き込む。銀時と付き合うようになってからというもの、今までにない距離感で私にちょっかいをかけてくる銀時への対応に悩んでいる。今までずっと幼馴染、戦友、悪友、そんな言葉がピッタリだった私たちの関係が、すっかり甘ったるい恋人同士になってしまっていることに、私は困惑している。銀時のことは好きだし、大好きだし、自分が望んでこういう形になったとはいえ。


「…なァ、なまえ」


こんなに甘い視線を送る銀時を、私は知らなかったから。


「ちょっ!銀時…近いってばっ!!」

「ぶべらっ!!」


恥ずかしさと戸惑いが相まって、思わずその顔面に拳をめり込ませてしまうのだ。鼻を両手で押さえながらも、どこか楽しそうな銀時に私はたじたじになってしまう。


「お前さァ、いつまでそんな初々しい気持ちでいんの。十何年も前から知った顔同士だっつーのに」

「そ、そうだけどさぁ!こういう関係になったの、最だし…」

「とっくに処女だってなくし…ぶべっ!!」


もう一発その減らず口に拳を決め込むと、ようやく銀時は私から離れた。真っ赤になった顔を隠すように私は体育座りをした自身の膝に顔を埋めた。確かに銀時が言うように、私は先日銀時にその、…初めてを捧げたワケで。その後、何度も愛されたワケで。それなのに何でかわからないけど、普段銀時が私にちょっかいをかけてくことに、とてつもない恥ずかしさを覚えてしまうのだ。それなのに銀時は所構わずスキンシップと称して、ボディタッチやら愛の囁きやら、恥ずかしさに困惑する私をからかってくる。


「なァ、一緒に風呂入ろーぜ」

「やだ!」

「んーでだよォ」

「だって、この前何もしないって言ったのに…」

「言ったのに、何ィ?俺の凄技に何回もイかされちゃって?挙げ句の果てには…」

「もう絶対一緒に入んないから!バカ!変態!」


またもや真っ赤になっているであろう私の顔を楽しそうに嬉しそうに覗き込む銀時は、もぞもぞと私の足をいやらしく撫で回す。「やだ、やめて!バカ!もう銀時なんか嫌い!」なんて思わず出てしまった言葉に、銀時はむっと表情を変えた。


「…お前何なの。散々好きだなんだっつっときながら、俺が近寄りゃやめて、近い!バカ!ってそればっかでよ」

「…だ、だって、それは…」

「あー、もういいよ。めんどくせェ」


ぱっと足に触れていた手を離し立ち上がった銀時の声色は少しもおちゃらけてなんかなくて。私は口任せにとんでもないことを言ってしまったかもしれない。玄関へと向かう銀時の名を呼んでも、足を止めてくれる気配はない。ブーツを履こうと玄関に座り込む銀時に慌てて駆け寄って「待ってよ」と声をかけた。


「お前が生きてて本当に嬉しかったし、再会できて、それに付き合えて本当に俺は幸せモノだって思ってたけど。…そう思ってたのは俺だけだったみてーだな」


振り返った銀時の表情はすごく悲しそうで、私は自分の行動を振り返って後悔した。確かに再会して付き合うようになってからの銀時は、周りが呆れるほどの大っぴらな愛情表現を私にしていた。すごく恥ずかしいし、人前でキスしないで!とか抱きつかないで!とか散々文句を言ってきたけど。それは私と再会できた喜びの表れだったとしたら、私はなんてひどい態度を取ってしまっていたんだろう。私だって、銀時と再会できて気持ちを伝え合えて、やっと望んでいた関係になれて嬉しいのに。恥ずかしいとか、人の目を気にして銀時から与えられる愛に、何も答えようとしていなかった。…私は最低だ。


「銀時、ごめ…なさ…っ」


座り込む銀時の背中に抱きついて、私は溢れる涙を隠すようにその背中に顔を押し付けた。


「私だって、銀時と会えて嬉しかった。同じ気持ちでいてくれてて嬉しかった。…でも、恥ずかしくて、素直に甘えられなくて…本当は、いっぱい甘えたいのに。どうしたらいいかわかんなくて…」

「……」

「銀時とキスするのも、…エッチするのも本当は嬉しいのに…もっとしたいって思うのに、恥ずかしくて言えなくて…冷たい態度とって見透かされないようにしてたの。…ごめんなさい」


ボロボロと溢れる涙に乗せて、自分の気持ちを素直に打ち明けた。本当は、何をされても幸せなの。だって、相手が銀時なんだもん。ゆっくり振り返った銀時は、優しく私を抱き寄せて耳元で小さく囁いた。



「…なーんてな」

「……え?」


思わず見上げた先にあった銀時のにんまりとした意地悪な笑顔に私の涙はピタリと止まってしまった。


「なまえがあんまりにも可愛いから、意地悪したくなっちまった」

「…は」

「なになに、銀さんとするキスもセックスも好きだって?よーしわかった。そんなに言うなら今日はたっぷり可愛がってやるからな」

「えっ、ちょ!えっ!?」


がばっと私を抱き上げてにたにたと嬉しそうに笑う銀時に、私はようやく騙されたことに気付いたのだ。すっかり忘れてたが、銀時は昔からこうだった。押してダメなら引いてみろ、って昔から言ってたっけ。絶望する私の耳元に唇を寄せて、無駄に艶っぽい声色で囁いた銀時の言葉は、更に私を絶望の淵へと突き落とした。


「今夜は寝かさねーからな、なまえ」


どれだけ嘆いても暴れても結局銀時に敵うわけもなく、愛の攻防戦は朝方まで繰り広げられた。


「やっぱり銀時なんか大っ嫌ぁいっ!!!」





My sweet darl.
(…どうだった?俺の凄技。もっかい試してみる?)
(変態!もうこっちこないでぇぇぇ!!!)





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葵様、今回もリクエストありがとうございましたo(^-^)o前回に引き続き幼馴染×銀時のストーリーでしたが、結局銀ちゃんにしてやられてしまいました。(笑)前回待たせてしまったのを反省して今回は先に執筆させていただきました!お気に入ってくだされば幸いです。いつも温かいメッセージありがとうございます!これからもよろしくお願いします(^−^)


3/2 reina.




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