▼ 温もり半分こ / 土方十四郎
「うぉあ!!」
明らかに今悪夢を見ていた。いつも通りマヨネーズを絞ると絞り口から小さい近藤さんが顔を出して『トシ!トシ!』とやたら嬉しそうな笑顔で俺に呼びかけてくる夢。新しいマヨを何個出しても全部近藤さんが絞り口から顔を出して俺を呼ぶ、本当に悪夢中の悪夢みてーな夢を見ちまった。
冷や汗をかきながら思わず飛び上がって声を上げてしまったにも関わらず、隣で眠るなまえは少しも微動だにしない。それどころか気持ち良さそうに寝息を立てている。静かになまえの腰に手を回して抱き寄せた。その愛しい温もりを抱いて眠れば少しはいい眠りにつけそうだと目を閉じた。
「…ん、…土方さん…?」
「わりぃ、起こしちまったか?」
掠れた声を上げるなまえに、俺も思わず小さく声をかけた。寝返りを打って俺の方へと顔を向けたなまえは寝ぼけているのか瞳には重く瞼がかかっている。薄く開いた瞳と安心しきったように下がる眉毛に、思わず綻んだ。
「…どうしたの、眠れないの?」
「あぁ。ちょっと変な夢見ちまった目が覚めた」
「どんな夢?」
「マヨネーズから近藤さんが出てくる夢。新しいマヨネーズ何個開けても近藤さん、近藤さんで」
「あぁ、…それは悪夢だね」
「んで、目覚めたらお前が気持ちよさそうに寝てるから。抱き枕にすりゃ、俺も安眠できるかと思ってな」
「ふふ、仕方ないなぁ…」
細い腕が俺の腰に伸びてきて、やんわりと絡みついた。互いに抱き合うような形になって温かさがさらに広がった。
「私は今幸せな夢見てたから、わけてあげる」
「どんな夢見てたんだ?」
俺の問いに小さく微笑んでおもむろに胸元に額を当てたなまえの言葉に、愛しさが心の中いっぱいに広がって思わず強く抱き寄せた。
温もり半分こ
(土方さんの夢見てたの)
-end-
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