Ichika -carré- | ナノ


▼ 団子好きなアイツ 1/2




「なまえ姐〜〜〜!!!」


先日足首を故障した私は、ここ数日月詠に自宅待機を命じられていた。確かにこんな足じゃ表に出たって役に立たない。3日目の自宅待機でしびれを切らし、私は松葉杖片手にひのやに足を運んだ。


「晴太、久しぶり。元気だった?」

「元気だよ!なまえ姐は元気…じゃなそうだね。ていうか髪下ろしてるの珍しいね!」

「晴太、お茶なくなっちゃったの、買ってきてくれる?なまえも、ホラ座んなさい」

「えーオイラがァ?!なまえ姐きたばっかりじゃん!」

ブーたれながら晴太は茶葉を買いに外へ走って行った。その隙に日輪に手招きをして、こそっと耳打ちをした。


「ねぇ、なんか聞いてる?月詠から」

「なんかって、何よ?」

「…その、銀時のこととか?」


もじもじとする私に日輪はニヤッと笑みを浮かべた。…あーもうこいつ絶対なんか知ってるし、絶対なんか楽しんでるよ。日輪は昔っからこういう話が好きなんだよなぁ。悪い顔してやがる。


「なぁに、なまえも気付いてたの?あの子本当わかりやすいもんね」

「月詠からなんか言われたわけじゃないの?」

「言われないわよ。好きなんでしょうって何度問い詰めても、違うって言い張るもの」

「でも、アレはそうだよなー」


ふぅ、と天を仰ぐと今度は日輪は驚いた顔をした。その表情に気付いた私は眉を上げて首を傾げた。…今度は何なんだ。コロコロ表情の変わるやつめ。


「なまえ、喜ぶかと思った。あの月詠が恋なんて」

「いや、うん。喜んでるよ、喜んでる」

「…ふぅーん」


またニヤリと不敵な笑みを浮かべる日輪に、私は寄せた眉を更に顰めた。ふぅん、そうなのね、と何度も頷いて、今度は嬉しそうにふふふ、と笑った。


「何だよ日輪、気持ちわりーな」

「まぁ、うん。わかるよ、銀さんいい男だもんね」

「待って、わかってない!日輪、あんた何もわかってないよ!」

「そうだ、なまえもわかりやすいんだった、ふふふ」


心底嬉しそうな顔で笑う日輪の肩をガクガクと揺らして必死に弁明するも、日輪の耳には届いていないようだ。日輪にとって、こんな面白い話はこれ以上ないだろう。長い付き合いの幼馴染同士が、一人の男を好きになるなんて。


「…って、好きじゃねェェェェ!!」


「…なまえか。こんな時間にでかい声出して、どうしたんじゃ」

「あら、月詠!噂をしていれば何とやらね」


昼でも食べに来たのか、ふらりと現れた月詠に私の顔は青くなる。銀時とあんなことがあってから、何だか気まずくて何となく月詠と話すのを避けていた。自宅待機と言われた時は、少しだけ安心したのに。


「ごめんね月詠。いまお茶が切れちゃって、晴太に買いに行かせてるとこなのよ」

「急ぎじゃありんせん、ゆっくり待つから気にするな。なまえ、足の具合はどうなんじゃ?」

「…あーうん、そろそろ出れそーかなぁって思ってたとこ」

「おっちょこちょいだな、ぬしは」


月詠に言われたくねェよ!と、出かけた言葉を飲み込んで、へらりと笑って見せた。日輪はニヤニヤとその様子を見てくるもんだから、キッと睨みつける。私の横に腰を下ろした月詠は安心したように笑った。


「すみませーん、団子……ってなまえ!それに百華のお頭」

「げっ、もう何なの。最近見ねェと思ったら忘れた頃にひょっこりと」

「ぬしも神出鬼没じゃな」


次に現れたのは、全蔵だ。何だ、今日はひのやで集会でもあるのか。何故こうも顔見知りが集まるんだ。物珍しそうな顔で全蔵を見る日輪に、仕方なく紹介してやることにした。


「あー、日輪。こいつは、その…服部全蔵。ただのともだ」

「なまえが世話んなってるみたいで。俺ァなまえの彼氏の服部全蔵っつーもんです」

「オイ嘘ついてんじゃねェよ!!」

「あなたが全蔵さんね、噂には聞いてるわよ。浮気して別れた元カレさんでしょ?」


日輪のナイスな返しに私は思わず親指を立てる。気まずそうに頭を掻きながら、私たちの向かいに腰を下ろした全蔵は日輪に団子をいくつか注文している。


「あんたが昼間っから吉原にいるなんて珍しいね。同伴でもすんの」

「しねーよ。お前の顔見に来ただけだよ」

「気色悪いから帰れよ」

「お前が髪下ろしてるとこなんざ、どれくらい振りに見るかねェ。髪伸びたか?」

「お前ほんとなんなの、会話の仕方知ってる?」


はぁ、と大袈裟にため息をつくと、月詠と日輪は困ったように笑った。何なんだよ、この会は。私の葬式かなんかなの?つーか何で全蔵は、わざわざ向かいの長い椅子座んの?痔なんだから立ってろこの…


「ストーカーイボ痔忍者、テメェはまーたストーカーしてんの?忍者っつーのも暇だなァ」

「そうそう、ストーカーイボ痔忍者……って、」

「銀時!!」


…やっぱりここは、私の葬式会場になるかもしれない。




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