▼ タダ食いのアイツ 1/2
少し肌寒い昼下がり。私は団子片手に非番の月詠を見回りという名の、団子や巡りに付き合わせていた。
「…ぬし、まだ食べるのか?」
「やっぱりさー、三色団子が一番美味しいよね」
話の噛み合わない私に月詠は呆れたような表情を浮かべているが、何だかんだ文句を言いながら付き合ってくれるもんだから、私は満足気に微笑んだ。
「頭、副頭!」
不意に百華の一人が、私たちの前に現れた。「お休み中に申し訳ありません」と付け加えて、こそっと月詠に耳打ちをすると、月詠ははぁ、とため息を吐いた。
「…なまえ、ひのやに行くぞ」
「えー?もうひのやの団子は飽きたんですけどォ」
「わっちも腹いっぱいじゃ。…ってそうでない!客がきておる」
客ぅ?と眉を顰める私は、どこかソワソワとして落ち着かない様子の月詠に首を傾げた。何かそんなに緊張する相手でもきているのだろうか。まさか将軍様とか?
…なんて気持ちで訪れたひのやで、目に飛び込んできた人物に、私は思わずため息を吐いた。
「よォ、死神コンビ」
「…お前のどこが客なんだ、どこが将軍様だ、ボケッ」
「将軍んん?なに、お前俺の暴れん坊将軍に用あんの?しょうがねェなァ、明日は立てねェ覚悟で…」
銀時の言葉が終わる前に月詠は銀時にクナイを投げ込んだ。「…冗談ですぅ」と苦笑いをする銀時を差し置いて、万事屋のちびっ子たちが駆け寄ってきた。
「ツッキー!なまえ!」
「おー神楽!よしよし可愛い可愛い」
「なまえさん、神楽ちゃんのこと溺愛してますね」
「えー?だって可愛いじゃん!あ、メガネくんこんにちわ」
「ぜんっぜん態度違ェェェ!!!」
月詠のクナイから解放された銀時は、血まみれになりながらよたよたと長椅子に座った。
「今日は一体吉原に何の用じゃ」
「あー?タダ団子食いにきただけだよ。したら百華の連中が、頭と副頭連れてくるから、待ってろって」
「何だと?…あやつら、早とちりしたか」
「ふーん、じゃあ、私らに用ないわけね?月詠ー帰ろー」
くるっと背を向けた私の襟を、月詠が摘んで離さない。げっそりと振り返ると、何故か全力で私を睨みつけるもんだから、肩を竦めてその足を止めた。
「まぁまぁ、団子でも食ってけって」
「お前んとこの団子じゃねェだろ!!!」
「つーかさァ、お前らツラは似てても、性格もスタイルも正反対だな」
…性格はまだいいとしよう、仰る通りだ。しかしスタイル、とは。
少し考えた私は自分の体と月詠の体を見比べた。同じように月詠もキョトンとした顔で自身の体と私の体を見比べている。そしてすぐにボッと顔が赤くなった。
…なるほど。
「…殺す!」
「大丈夫、大丈夫!銀さんお前くらいの小ぶりも行けるから、大丈夫!」
「なにが大丈夫だ!女は胸だけじゃねェんだよ!お前の将軍様もぎ取ってやろーか!!」
私は眉を吊り上げて既に血まみれの銀時にクナイを打ち付けた。
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