「純愛、か……」
「どうしたの、名字さん」
私が呟いた言葉に反応したのは、隣の席の不二周助。
私と彼は、なんの因果か三年連続同じクラスである。ちなみに、隣の席になるのはこれで七回目。
「友達が、本貸してくれたの。彼女いわく『今大人気の純愛モノ』らしいんだけど」
「うん」
「純愛のはずなのに昼ドラのごとくドロッドロでさ。嫉妬だの浮気疑惑だの邪魔者だの元カノだの」
まあ、昼ドラ観たことないけど。なんとなくイメージとして。
「純愛って一体なんなんだろー、と考えてしまったわけですよ」
「なるほどね」
そもそもさ、
「純愛って純粋な愛でしょ? 純粋って『悪い考えが少しもないこと』って意味なんだよ」
「クスッ、もしかして辞書引いた?」
ご明察。どうしても気になってしまって調べたのだ。
「そしてさ、『恋は下心』って言うでしょ? 特に私たちみたいな思春期の少年少女は下心満載じゃない?」
ハグ、キス、更にはその先のことまでしたがる。
「個人的に、恋が愛に昇華するにはすごく時間がかかると思うの。それを考えると、『純愛』ってすごく難しい事だと思うんだけど」
不二くんはどう思う?
彼を見ずにそう問いかけると、彼はクスッ、と笑った。
「とっても面白い意見だね」
「じゃなくて、不二くんは『純愛』についてどう考える?」
「そうだな……」
しばしの沈黙。そして、
「僕は、大好きな名無しを見てるだけで三年間すごく幸せなんだけど、これは『純愛』って言うのかな?」
「…………えぇっ!?」
驚いて不二くんを見ると、彼の綺麗な瞳が私を写していた。
華麗なる不意打ち
(さ、三年間ずっと……?)
(うん。あ、返事聞かせてもらってもいいかな?)
(……保留でお願いします)
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私の思う『純愛』はこんな感じです。ただ相手を見ていられれば幸せ、みたいな。
素敵な企画に参加させて頂き、ありがとうございました!
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