いつも通り、昼飯を誘いに彼女の教室へと向かう。
学年が違うため、教室の階も違う。
それでも毎日なんの苦もなく、
面倒くさいとも思わず通える。
きっとそれは、"名無しに会いたい"その一心から。
でも最近では少し不服なことがある。
教室に行くと必ずと言っていいほど、彼女の横には
背のひときわ大きな俺のダブルスパートナーがいるのだ。
最初は同じ学年だし、同じクラスなのだから、と
たいして気にもしていなかったが、
最近のアイツの彼女への執着は異常だ。
異常…というと変な風に
とられそうだから言いかえると、
"like"が"love"に変わってきている、
とでも言っておこうか。
彼女はかわいいし、優しいし、気も利くし、
そして、天然。まわりの男がほっとくわけがない。
長太郎もその一人なわけで…。
もんもんとそんなことを考えていると、
一階の差なんてあっという間。
彼女…と長太郎のいる教室についた。
「あ、亮!」
最近では声をかけずとも、俺の存在に気づいてくれる。
そしてタッとドアのところまで走ってきた。
置いてけぼりにされた長太郎に
ちょっと優越感を感じてしまう。
「今日は二人分お弁当つくってきたんだぁ!
だからね、食堂じゃなくて屋上に行こう?」
「あぁ、構わねぇぜ。」
屋上はほとんど人はいない。
カップルにとってこれ以上にいい場所があるだろうか?
…まぁ、授業中にはたまにジローが寝ているけど。
「はい、亮の分!
ちゃんとチーズサンドいれといたからね♪」
「マジで?!サンキュ!」
自分の大好物まで覚えててくれるなんて。
これが、あれか。世で言う幸せ←。
でもそんなほのぼの空気もつかの間。
彼女の口からとんでもない言葉がでてきた。
「そういえば、今日長太郎に…」
「?!」
長太郎という言葉に異常に反応してしまう。
マジ激ダサ…。
「…。なんでそんなビックリするの…?」
「え?あ、いや…なんでもねぇよ。」
「…?まいっか。
そうそう、それでね休み時間に長太郎がね、
急に真面目な顔してね、こう言うの。」
「……。」
「宍戸さんと別れてよ。って。」
「はぁ?!」
アイツ、とうとうやりやがったな!
俺のいないうちにとんでもねぇ強硬手段にでてやがる。
今すぐにでも長太郎のところへ行って、
ガツンと言ってやらねぇと気が済まねぇ!
そう思って立ち上がると…
「長太郎ってさーぁ。
ホント、亮のこと大好きだよねぇ。」
「…は?」
…は?…え、は?
「だから私言ってやったんだ!」
「?」
「別れないよ!亮は私のだもん!
ぜーったい長太郎になんか渡さないからね!!…って!」
…。
コイツ、マジで…。
口を半円に曲げてそう言い切った彼女を見ていると
なんだか、さっきまでの怒りがバカバカしく思えてきた。
「ぷっ…。」
「へ?」
「ぷっ…あははははっははは!!」
「な、な、な、なんで笑うのよ?!////」
爆笑しながら頭を撫でてやると、
"意味が分からない"といった顔で
不思議そうにずっと俺の方を見ていた。
「いや…好きだなって思って、」
「な、なんで今…////」
一通り笑って、(その間ずっと不思議そうな顔をしている奴がいたけど、)
寝っ転がった。彼女お手製のチーズサンドをくわえながら。
「もー、行儀悪いよ!」
そんなかわいいお説教も今はちょっと聞こえないフリ。
そしたらまた、"亮〜…"って名前を呼んでくれるから。
目を閉じてみると、ほっぺをつままれた。
そこでちょっと彼女に思いっきり勘違いされて、
ポカンとしている長太郎の姿を想像してみると、
またさっきの笑いが込み上げてきた。
長太郎、諦めろ、な。
お前にはちょっと無理だぜ。
そうだ、今日部活の時にからかってやろうか。
俺も"ぜーったい長太郎になんか渡さないからな!!"って。
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