「名無し先輩、好きっス!」
「うん。どうもありがとね」
こんな会話を交わしたのはこれで何度目か。
初めて俺が好きだと告げた時は、それこそ告白!って感じで、
名無し先輩は「えっ…」と一瞬固まったりしてくれたんだけど。
今じゃこれだもんな…。
「ねぇ、俺が好きって言ってるんスよ?何かないんスか?」
「だから、ありがとうって」
「そうじゃなくて、」
「だってもう聞き慣れちゃったよ」
「だったら言ってくださいよ〜先輩は俺のことどう思ってるんスか?」
「よく告白してくるなって」
「あぁもう!そうじゃなくて!」
こんな風にはぐらかされるのも毎回のこと。
「いい加減諦めろぃ」「よくもまぁ飽きもせずにのう…」
見かねた先輩達には色々言われるけど、はっきりフラれたわけじゃねぇし。
俺は名無し先輩に「嫌い」って言われるまで諦めない。
そう、俺はまだ名無し先輩自身の気持ちを聞いていない。
だから今日も全力で想いをぶつける。
「名無し先輩、好きっス!」
「はいはい。ありがとね」
何度想いを伝えても、名無し先輩の俺に対しての気持ちを窺い知ることができない。
好き好き言ってっと、新鮮味が無くなってくんのかな?
(こないだ「聞き慣れた」って言われちゃったしな…。)
俺は、名無し先輩から新しい反応を得るためにはどうしたらいいかを考えた。
…単純に、好きって言葉を言い換えることしか浮かばなかった。
「じゃあ、先輩」
「何?」
「名無し先輩のこと、愛してる。」
好きって言葉より、いくらかむず痒かったけど、そんなこと気にしていられない。
その甲斐あってか、
「えっ…」
最初の告白の時のように、名無し先輩は一瞬固まった。
「あ、赤也…」
「どうもありがとう、とでも言うつもり?
俺はまだ先輩からの気持ちを聞いてないんスけど」
「・・・・・・」
「名無し先輩はどうなんスか?」
「な、何…」
「俺のこと。好きじゃない?嫌い?」
すがる想いで一気に捲くし立てると、
名無し先輩は自嘲気味に笑って お手上げ、と軽く両手を上げた。
やっと自分の気持ちを言う気になったんだな!
「赤也って一途だよね」
「そうっしょ?」
何を今更。分かりきったことを。
俺が何回告白したと思ってんだよ。
「俺、名無し先輩一筋っスから」
「そういうところ、いいよね」
「いいっしょ?」
「好きだよ」
「…へっ?」
それは突然。
先輩の口から聞こえた言葉に、心臓が大きく跳ねた。
俺の聞き間違いじゃなければ…
「先輩、今…!」
「言っちゃうと、告白がそれっきりになっちゃうから…黙ってたんだけどね」
「え…?どういうこと?」
「好きでもない人の告白は、黙って何度も受けたりしないってこと!」
満面の笑みで俺の頭をくしゃくしゃと撫でながら「好きだよ、赤也」と呟く先輩に、
もう、俺のほうがお手上げだった。
だけどひとつ、先輩は勘違いしてる。
「先輩、俺は名無し先輩のこと、大大大大大好きっス!!」
俺の愛の告白は止まったりなんかしない。
むしろエスカレートしちゃうってこと、知っといて。
end
「純愛=一途」だと思い浮かんだので、一途な赤也くんを書いてみました。
しつこくてもウザくても(笑)お互いに「愛」があればよし!な、気がする。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
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