彼と出会ったのは、もう何年前だろう。そんな事を考えるのさえ無駄と思える程昔なのは、確かな事実なのだが。

前方に揺れる銀髪を眺めながら思考を飛ばしていると、フッ、と目が合った。


「お前さんは、いつも俺を見とるのう」
「雅治の気のせいだよ」


くつくつと愉快そうに笑う雅治。
こんな風な会話をする程度の幼馴染みなのだ、所詮私達は。

詐欺師と呼ばれているにも関わらず、この鈍感は、14年もの間、騙されている。
私の詐欺もなかなかのものだ。

立海のテニス部レギュラーの幼馴染みというだけでも面倒なのに、さらに恋心を抱いていると分かれば、ファンクラブに何をされるか考えるまでもない。

誰にもばれないよう、ひっそりと想い続けて、早14年。

きっとこれからも、静かな恋をし続けて、いつの間にか他の人を好きになって、大人になったら、「そう言えばね、私、雅治が好きだったんだよ」なんて、笑いながら話せるんだ。

───そう、思ってたのに。


「お前さん、俺が好きじゃろ」
「…は!?」
「その反応…図星じゃな」
「違っ、狼狽えただけ!」
「名無しは分かりやすいのう、まぁ、そこが可愛いんじゃが」「ま、雅治!からかわないで!どうせ嘘でしょ!」
「ほー、名無しは俺を信じてくれんのか。まー君寂しい」
「嘘つけ!まー君とか可愛くないから!」


じゃれあい半分、頭を叩こうと振り上げた手は、そのまま雅治に掴まれた。
視線がぶつかって、逸らせない。


「のう、名無し───」





「俺は、名無しが好きじゃよ。そろそろお前さんも、種を明かしてくれんか?」



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初めて仁王くんを書いてみました。深弘桜(ミヒロサクラ)と申します。やや方言やら話の展開がグダグダですが、いつもの事です(キッパリ)
読んでいただけて、少しでもキュンキュンorニヤニヤしていただけたなら、とても嬉しいです。

素敵な企画に参加させていただき、ありがとう御座いました。

御礼。



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