だんだん言いながら小僧はあたしのあとを追って来た。
何なんだ。
これが指導の賜物だ
「まさに女神です! スーパービューティフルです! えっと」
「レインボーパーフェクト」
「あっ、レインボーパーフェクトです!」
興奮した壇君が声の限りに叫ぶのを亜久津がフォローしているこの状況で、あたしは帰途のための自転車に跨ったまま、さあどうするか。
そういや授業サボった奴が何故ここに。
「亜久津明日は授業出なよ」
「ケッ」
出席日数とか先生の立場とか、あたしはついいろんなことを心配してそんなことを口にしたわけだけど、目の前のちっちゃいのが目をきらきらとさせる。
「僕には、僕にはないですか!?」
「何が」
「僕への愛の言葉ですよ!」
特にないけど、とあたしは未だに彼らのノリについていけなくて素っ気なく答える。
しかしこいつのテンションは高いまま。
「はあ、これが恋するってことですね! 僕今すごく楽しいです!」
「良かったな、太一」
「はい! これからもいろいろ指導してくださいです、亜久津先輩!」
壇君は生き生きして、プリクラを撮るときのような決め顔で「名無し先輩に合う大人の男になるです!」とあたしに。
というわけだ、亜久津は睨みを利かせた悪役の笑みを浮かべた。
「指導があるから授業は出れねぇ。担任に言っとけ」
そんな言い訳通じるわけがないでしょとつっこもうとしたところで、壇君はあたしの自転車の後ろに腰かけて「さあ、愛の逃避行です!」と。
亜久津に何を吹き込まれたんだと壇君をちょっと心配してみるけどその笑顔は満開で太陽のようで。
「僕だけの女神、愛してるです」
たぶん、低めの声で耳元で愛を囁いてみろって言われたんだろうね。
いとも簡単にときめいちゃったじゃないか。
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