付き合って別れて泣いてまた性懲りもなく付き合った。私はとんだ阿呆者である。でも何故かしら気分は前の彼と居た時よりもずっと楽。前の人はあんまり何でも出来る人で、知らず知らずに負い目を感じていたみたい。今の人、名前は一氏ユウジ。


「名無し、帰るぞ」
「名無しちゃん待たせちゃってごめんね?」
「あ、いいよ全然。帰ろう?」


放課後のやんわりと日が差し込む教室に、私を迎えに来てくれたのはユウジ君と親友の小春ちゃんだ。ユウジ君と付き合い始めた頃には既に小春ちゃんとは仲が良かったけれど、この頃は特に仲良くなったように思う。


「小春ちゃんバイバイ!」
「名無しちゃん、ユウ君またねっ」


手を振り返す代わりの投げキッス!小春ちゃんのいつものさよならの仕方。ユウジ君は今生の別れみたいに長くおっきく腕を振ってて、最初はノーマルだった私も最近はユウジ君に負けないくらい大声を出してるんだ。変なの、前は人目ばかり気にしてたのにさ。

小春ちゃんの背中が段々小さくなって、ユウジ君と私の二人きりになった。ユウジ君の背は私に比べたら大きい、手も歩幅も違うのに不思議と揃って並んで歩く。彼は小春ちゃんが居なくなると余り話さなくなってしまうけれど不満は感じない。だってさ、ちびの私に歩幅を合わせて歩くのはとても歩きにくいのに彼もちっとも不満を言わないから。

告白はユウジ君からで、一度は断った。だってユウジ君と前の彼は同じ部だし、すんなり了承するのも何か嫌だった。二度目はちょうど前の彼と話してた時。彼に腕を掴まれて、不穏な空気になったタイミングでユウジ君がやって来た。


「白石、もう離したれや」
「……なんでユウジが居んねん」
「ここは屋上や、誰が居ったって構へんやろ。それより離しや」

名字は俺の彼女やで?


まるで正義のヒーローみたいだった。彼女になった覚えも無かったけど便乗して白石君に謝った。その一件の後しばらくは尻軽女と軽蔑されただろうかと不安だったが、よく考えたら白石君はそんな人柄では無い。そして私は流れるようにユウジ君の彼女になった。だけど後悔してない。


「ユウジ君」
「あ?」
「ううん、何でも」


名前を呼べば聞き返してくれる。それだけで心地良いやりとりだ。何も言わずに送ってくれる、私の家まではまだ距離がある。そっと私は彼の手に触れてみて、そしたら私が慌てて引っ込めるよりも先に私の手は捕まった。手の平からあったかさがじわじわっと伝わる。くすぐったいや、この感覚。


「名無し」
「何?」
「いや」


意味深に薄く笑って彼はふいと前を向く。さっき私が呼んだからお返しだろう。と思った矢先、隣からの呟きに私はまたドキッとした。


「、幸せやなと思て」
「――うん、幸せや」


ここに幸せ宣言をする。
最後の恋とは言えないけど、大切に温めていきたい真っ直ぐな恋。


企画サイト様『noname』様提出


---------------

すみませんすみません。純愛といえば、やっぱりちょっとぶっきらぼうな一氏君が思い浮かびました。にしてもとんでも無いものを書いてしまいました、妄想と四天宝寺への愛で作ってしまいました。純愛になったでしょうか……?何はともあれ、ありがとう御座いました!!




戻る
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -