不意に精市の手を握ると、冬だから少し冷たくはあるけれど人間味のある暖かさが感じられて少し安心した。

私から手を握るなんて珍しいことだから、精市は目を軽く見開いたあとでくすぐったそうに"どうしたの?"と問いかけた。

「ううん。ただ精市の手、あったかいなぁって」
「うーん、冷たくなってると思うけど」

精市は私の言ってることが不思議なようで繋いだ手と私を何度も交互に見た。
その様子が普段の彼からは想像できないほど可愛らしくて思わず笑ってしまう。

「笑うなんて酷いなぁ。俺は真剣に謎解きをしてるっていうのに」

真剣そうな顔を作ってそう言うとまた目線を交互に移しながら悩み始めた。
全く変なところで真面目なんだから。

入院しているときの精市の手の冷たさを私は知っている。
今の手も冷たいけれどちゃんと生きている人間の温もりがあの時と違くてある。
それがどれだけ嬉しくて私を安心させてくれるものかなんて精市には見当もつかないんだろうけど。

「名無しの手は俺と違くてあったかいね」
「うーん、大分私も冷えてるけど」
「そんなことない。名無しの手は俺の手を人間らしく暖めてくれる」

私の考えを読んだかのような言葉に今度は私が目を軽く見開いた。
あんなに悩んでいたのにあっさりと答えを知らぬ間に言っていると知ったら精市はまた驚くんだろうな。

「だからこれからも暖めて、俺を生かして?」

"ね?"と問いかけと言うには答えの解りきった言葉を私に投げ掛けてくる精市は多分いま、誰よりも人間らしく精一杯生きている。

そんな彼が愛しくて私は最初より暖かくなった繋ぐてのひらの力をほんの少しだけ強めた。



企画サイト『no name』様に提出



G書き終えて一言

純愛…簡単そうに見えて凄く難しいテーマですよね。
今回は互いが互いを生かしていく…そんな純愛を目指してみました。

最後になりましたが素敵な企画に参加させていただきありがとうございます!




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