「名無し先輩っ!今日の試合見にきてくれますか?」

『うん。今日で最後だしね』

あれ、何か最後だったっけ。英語のテスト、宿題、って俺勉強ばっかじゃん。

「…へ?」

『転校、するんだ。今までありがとね』

「…嘘ッスよね?」

『お父さんの親のほうで用事があって行かなきゃなんだ…こればかりはごめんね』

本当なのか?認めたくない。信じたくない。…名無し先輩の悲しそうな顔から、辛うじて本当なんだと認識できた。

「じゃ、じゃあ毎週会いに行きます!何処なんスか!?」

『LA。ロサンゼルスだよ』

遠すぎ。遠すぎっしょ…

『私ね、…切原君の事好きだよ』

「…でも会えないじゃないスか!」

『高校卒業したら私だけ日本に戻るんだ』

「んなこと聞いてねぇよ!」

つい暴言が口をついてしまう。本当はこんなこと言いたくない…「好き」って言いたいのに乱暴な言葉や感情しか出てこない。

『試合だよね。行こっか』

背中を向けて歩き出す先輩はどこか悲しそうにも見えた。
始めて好きになれたのに…先輩が初恋の相手なのに。初恋は実らないって本当なのかもしれない。

「名無し先輩…俺もすっげえ好きッス。何より誰より大好き」

『私も、好き』

どちらともなく手を繋ぐ。愛しいこの手を離したくない。



大好きなこの人の手を。



コートに立つ君の背中はいつもより、何百倍もカッコ良く見えた。

「先輩、」

『見てるから。今日は最後まで』

いつも何かしら用事があって最後まで見れない事が多かった。ニカッと笑ってピースしながらコートへ行く赤也。最後だと思うと、応援にもいつも以上に気合いが入る。

『頑張れっ、赤也!』



…結果は残念な事に、6ー1だった。幸村君相手に粘っていたのだけど。

「負けちまいました…」

『頑張ったね』

私にできる精一杯の笑顔で笑った。

「ヘヘ…先輩が見てたのに俺、」

俺がそう言った直後だった。いつもなら恥ずかしがって絶対にやらないはずなのに、俺をギュッと抱きしめた。心地よくて、暖かくて、良い匂いがする。シャンプー何使ってんのかな。

「名無し、先輩…」

『赤也…私だって離れたくないよ…』

サラサラの髪が俺の鼻をくすぐる。素直に

「俺も」って直ぐ言えない自分が可愛らしかった。



ああ、赤也君が大好きだ。


あー、すっげぇ名無し先輩好き。大好き。







ずっとこうしていたい、そう思うのに

(離れてしまう)
(気持ちは通じ合ったのに)
(サヨナラから、始めよう)



end

初めに。稚拙な文章で申し訳ないです…!ここまで読んでくださり、名無し様大感謝です!(…)
そして企画を立ち上げてくださった様、この企画に関わった全ての方々ありがとうございました!




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