とても懐かしい夢を見た。
中学三年生の時の夢。


「なあ、なあ、名字 、お菓子くれよィ」
「ブン太!強請るな!」
「悪いな、騒がしくて」


私の中学三年生はすごく騒がしかった。
柳君と知り合ったのが切っ掛けでテニス部に囲まれる生活だった。

大学生になる今でも柳君の笑顔が離れない。
私の、初恋の人。


「柳君、あのね」
「どうした?」
「私、明日には引っ越すの」


卒業の3日前だった。
急に決まった父の転勤。
それを知りながらも別れが怖くてとうとう前日にまで迫ってしまった。


「そうか、元気でな」
「うん、ありがとう」


私も当分日本へ帰ってくることはない。
留学をして語学を勉強するためだ。

涙を堪えていた。
でも、止められなかった。


「おい、名字 、大丈夫か?」
「柳、くん、好き、だよ」


返事を聞くのが怖くて私はその場から逃げた。
その後、会う事もなく、5年が経った。
あれから何度後悔した事だろう。


「気をつけてね」
「分かってるよ、お母さん」


私は5年振りに日本へ帰国する。
あの、思い出が溢れる日本へ、と。



「やっと、帰ってきた」


目の前には立海大付属中学校。
外見は全く変わっていなかった。
20歳になった私は日本へと帰り、立海大に通う決意をした。
幸い転入も完了し、両親も快く許してくれた。


「あ、そうだ」


学校から少し離れたところにそこはあった。
町は変わってもここだけは変わっていない。
木に囲まれた並木道。


「懐かしいなあ」


端にあるベンチに腰かけ呟く。
よく柳君と話をした場所だ。
本当に懐かしい。
すると、誰かがベンチに向かって歩いてくる。
もしかしたらここは誰かの特等席になっているのかもしれない。
素早く立ち上がった。


「え、」


歩いてくる人物の顔を見て時間が止まる。


「久しぶりだな、名字 」


5年と2日振りだな、という彼は全くあの頃から外見は変わっても中身は変わっていない。


「柳君、久しぶり」
「そしてお前が俺に言い逃げしてから5年と2日3時間だ」


律義に覚えている彼に苦笑すると勢いよく腕を引かれて彼の腕の中へダイブする。


「何故俺の返事を待たなかったんだ?」
「え、あの、」
「この5年間、お前が忘れられなかった」


掠れ気味の声で囁かれ心臓が跳ねる。


「お前が好きだ」
「や、なぎくん、私も、」


――忘れられなかった


柳君の背中に腕を回してそれに応える。


「俺と、結婚を前提に付き合ってくれ」
「喜んで、」


「おかえり、名無し」
「ただいま、蓮二」



赤い糸は引き合った
(時は巡り、結ばれる)
(まるでお伽噺のよう)
(これをきっと)
(運命と呼ぶのだろう)

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庭球純愛様、100万hitおめでとうございます!
自分なりの純愛を書かせていただきました。
すごく楽しかったです。
これからも応援しております。

参加させていただきありがとうございました!

10/10/25 新羅


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