「何やってんだ?」



「…亮」






私名無しは、ついさっき跡部君に告白をして、えげつないフラれ方をした。



「アーン?ただのミーハーだろ?散れ、ブス」



跡部君がこんな人だとは思わなかった。
何よりブスと言われ、悔しい。
そう思えば思う程何かが込み上げてきて泣きそうになり、私はその場にうずくまっていた。

そこをたまたま幼馴染みの亮が通りかかって私に声をかける。


最悪。


幼馴染みといっても仲が良いわけではなく、いつも喧嘩をしていて挙げ句私はいつも泣いていたからそりゃあもう周りの奴らにウザがられていた。
だから、最悪。

こんなときにコイツに逢うなんて。




「…ぶっさいくな顔だな」





亮がそう言えばさっきの跡部君の言葉が蘇ってきて無性に腹が立つ。

私にはショックだとか思っている脳はなく、つい先程まで恋をしていた相手に苛立つだけで、未練などは全くない。

…でも、悔しくて。
跡部君に言われたのが悔しくて、目の前の亮に反発することすらできなかった。





「どうせ…ブスだもん」





そう言うと私はまた泣そうになる。






「…不細工!ぶっさいく!」



「いいもん!どうせぶっさいくだよ私は!」



「はぁ!?開き直るのかよ!?じゃなくてだな…お前何してたんだよ、こんなところで」




急に優しく問い掛ける亮に、私はただ俯く。





「うぅ…だって……」



「跡部、だろ?」



「なっ…!」



「フラれでもしたか?」



「……!!」






亮の言葉に余計に泣きそうになって、目尻には涙が溜まる。

そうだ、悲しいんだ、私は。
跡部君に酷いフラれ方をしたから。






「はぁ…まじ不細工だな」



「そんなに不細工不細工言わないでよ!」



「お前なんか不細工だ!だから泣いちまえ!!ブスブスブス!」



「え…?」





何、何。

なんでそこまでムキになるの?

私がぽかーんとしていると亮は顔を真っ赤にしていた。






「名無しを泣かしていいのは俺だけだ!だから泣けよ!」



「何よ、それ」



「うるせぇ!名無しは俺のモンだ!跡部なんかにフラれて当然だ!」



「……え…」



「…だから、…辛いなら泣けよ…!」







亮に、甘えてもいいのだろうか。

子供の頃とは比べものにならないくらいに大きくなった亮の胸で、泣いていいのだろうか。





「…お前を泣かせていいのは俺だけだ!お前は…俺のだから…!」





そしてそっと、亮の胸で啜り泣いた。






「名無しが好きだ。ずっと前から…。俺以外にお前を泣かせる奴は許さねぇ。」



「亮…ありがとう」



いつだって、
私が泣く理由はあなた。

(そんなあなたを)
(好きになっても、いいですか?)




-END-

純愛目指して撃沈。
そしてガキ大将宍戸さん。
宍戸さんは案外独占欲が強いと思います。

好きな子をいじめちゃうタイプの人間で、
その中に不器用な優しさがあるといいな。

…ベタなのを書きたかったんです(´・ω・`)
夢主は溜め込んで泣くのを我慢しちゃう子で、宍戸さんがわざと酷いこと言って泣かす。そういう話でした。


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