「名無しー…」




テスト期間1週間前。

部活はテストに備えて勉強する為に休みになっとる訳で、当然テニス部のメンバーは勉強をしている。

そんな中で勉強する気の無い俺は暇を持て余しとって、丸井か赤也を呼び出そうにも真田にバレたら面倒じゃし、名無しの家に来とった――んだが。




「……何よ?」

「…暇、なんじゃけど」

「暇って…仕方ないでしょ」




名無しは、架けている眼鏡に触れながら溜め息を吐いた。

まるで邪魔者を見るかのような目。

折角名無しとのんびりしようと思って来たのに、彼女が勉強する傍らで雑誌読むしか出来んって…。




「マジで暇じゃて」

「なら勉強すれば良いじゃない」

「俺は出来るから勉強せんでも良いのー」




そう、口を尖らせながらクッションを抱きしめて言えば、「わがままばっかり」とまた溜め息を吐かれる。

それによって項垂れる俺を余所に名無しは黙って一人シャーペンを走らせて。


普段は眼鏡を架けない名無しだが、勉強する時だけ眼鏡を架ける。だから結構貴重で、つい横顔に見とれとったが、そんな事を言ってる場合じゃない。このままでは来た意味が無くなる。


そんな俺の視線に気付いたのか、名無しは顔を上げた。




「…何見てんの?」

「いや…、名無しの眼鏡姿も良いよなあって見とれとった」


「バっ、バカ言ってないで雑誌読んでなさいよ」

「おー、照れとる照れとる」

「う、うるさい!」




名無しはバッと勢い良く俺から視線を逸らすと勉強を再開する。

その顔は、耳まで真っ赤だった。




真面目なキミ




普段から本当に真面目で。端から見たらつまらん奴って思われるかもしれん。俺も最初はそうじゃった。

でも知れば知るほど楽しくて。照れた顔も可愛くって、まるで泥濘に嵌るように抜け出せんくなる。


つまり、そんなキミにゾッコン中。


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