「いたた…」
「ほら、名無し。」
「‥ありがと、」
ほら、と手を差し伸べると、素直に手を取り、ちょっと照れながら、お礼を言う名無し。毎朝の出来事。
家が近くて、歳も一緒で、学校も一緒で、部活も一緒で。名無しと毎朝同じ道を歩くのは必然で。時が経つに連れ、それが俺たちには当然になった。加えて、名無しが転けるのも。
小学校の時も、毎朝転けて。中学生になっても、毎朝転けて。だからいつの間にか、危なっかしくて放って置けなくなった。
それが恋心だと、気づくには時間がかかったけど。
「清純は、いつも優しいね」
「、どうしたの突然」
「いや‥思っただけ」
そう、と平然と相槌を打ってみる。が、心臓がバクバクしている。顔も熱い。人を好きになるってこんなことだっただろうか?こんなに一喜一憂するものだっただろうか?
自分の中で葛藤していると、名無しが俯いたまま小さな声で話し出した。
「清純は‥女の子好きだから‥優しいのかなって」
思わず、へ?と間抜けな声を出してしまった。出た言葉が、意外過ぎて俺は驚きが隠せなかった。これは期待してもいいのだろうか?なんていう思いも込み上げたりしてきた。
そんな俺を余所に、名無しは突然走り出した。そして、また転けた。
俺が慌てて手を差し伸べる。名無しは、それを受け入れる。けど、立ち上がらずに口を開いた。
「…私だから、特別、って思っちゃ‥ダメかな」
俺は、名無しの手を握りながら、世界一幸せだと思った。
軟派な俺が恋した
(ナンパ、やめないと付き合わないからね)
(えっ!?)
20100401
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庭球純愛様、1000000hitおめでとうございます。
自分なりに、純愛=幸せな恋愛、かと思いました。
素敵な企画、どうもありがとうございました。
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