「伊武くん伊武くん」

「なに」

「髪の毛綺麗だね」

「…今更」

「あたし癖有るから、伊
武くんみたいな髪すごく
羨ましいの」


別にアンタはそれでいい
のに、と言う台詞は喉前
で噛み殺した。隣の席の
この子は、いつも話し掛
けてくるけど、俺と話し
て何が楽しいんだろう。
俺ってこの性格だから嬉
しくても素っ気無い反応
しちゃうんだよね、本当
は。こんな本音が言えた
らどんなに楽なんだろう
な?


「手入れ大変でしょ?」

「そこそこ、かな」

「嘘だ、絶対時間掛けて
るよ!女の子でもこんな
にサラサラな子、滅多に
いないもん」

「…フツーにこんぐらい
の子はいるでしょ」

「ううん。伊武くんがい
ちばんだよ」


無償に歯痒い気分になる
。違う意味で捉えてしま
いそうな俺が、いつもの
俺じゃないような気がし
て、どうして良いかわか
らなくなる。いつから、
何でこんなに好きになっ
ちゃったんだろう。俺も
所詮フツーのオトコの1
人って事だよなあ、


「触っても良い?」

「え?別に…いいけど」


彼女の柔らかい手が俺の
髪先を捕らえた。ほんと
に触るんだ…。って言う
か名字さんは俺の気持ち
に気付いてない訳?ちょ
っと鈍感過ぎるよなあ。


「すごい、サラサラ」

「そう?」

「うん、しかもすっごい
良い匂い」

「名字さんの方がいい匂
いすると思うけど」

「えっ、」


彼女の顔を見上げると、
みるみる内に頬が紅く染
まって行った。あ、なん
だか新鮮…って言うか、
初めてこういう反応を見
た気がする。…それもそ
うだよな、俺が初めて自
分から彼女のこと褒めた
気がする。耳まで真っ赤
になっていて、凄く愛お
しく感じられた。


「全然…、全然そんなこ
と無いよ」

「否定しなくていいよ。
それに、俺キミの髪の方
が好きかも」

「え、ちょ…伊武くん」


今度は俺が髪に触れる。
俺なんかよりよっぽどふ
わふわで軽くて、艶々し
てて、

あれ、俺って結構本音言
える奴なんじゃん?


「名字さんの髪、好き」





次の瞬間名字さんは



好きなのは髪だけじゃな
いんだけど、



と言う俺の言葉に、瞳を
潤ませる。







詞、足りない
(あたしが先に言うつも
りだったのに、)




---------------
100万Hitおめでとう
ございます。拙な文章で
すが、お祝いさせて頂き
ます。好きで好きで何も
言えないのに、愛しさ爆
発で真っ直ぐに気持ちを
伝えちゃうような彼に、
純愛を感じます。お目汚
し失礼致しました。



瑪束


戻る
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -