放課後恒例の友達とのお喋り。周りの女の子たちの恋バナを聞いてもいまいちぴんとこなかった。彼氏がいる子の話を聞いて、羨ましいなあ、とは何となく思うけど私にはまだ早いのかな?とも思う。
だから「名字は気になる人とかいないの?」と聞かれてもいつも「いないよ」の一点張り。ラブとライクの違いなんてわかんないよ。



テニス、テニス、テニス、で過ごしてきた俺は他の事に目を向ける余裕などなくて、気付いたら中学生活も三年目に入ろうとしていた。
周りで彼女が出来たとか、告白したとか、そういう話題が出ても全く興味がわかなかった。俺だっていつかはそういうことに興味が沸くんだろうけど少なくともまだ先だと勝手に思っていた。



友達の付き添いで見学したテニス部の練習。テニス部は周知の通りギャラリーが多い。
友達のようにギャラリーを掻き分けて練習を見学する気にもなれなくて近くのベンチに座っていたらコートからボールが飛んできた。拾ってみたけど誰かが取りにくる様子もない。…どうしよう?



長太郎が盛大なホームランを打った。勿論野球じゃなくてテニスで。タイミング良く休憩時間になったからコートの外を探して歩いていると前からキョロキョロしながら歩いている女子を見つけた。
確か、同じクラスの名無しだったと思う。ジローがあの子可愛いよね、と言ってたヤツだ。



誰か知ってるテニス部の人が歩いていないか、とフラフラしていると前からテニス部のジャージを着ている人が歩いてくるのが見えた。
同じクラスの宍戸くんだ。話したことはないけれど様子からしてこのテニスボールの持ち主のようだから声を掛けてみた。



「あの、宍戸くん、もしかしてボール探してたりする?」
「ん?おう、」
「はい、これコートから飛んできた」
「悪ぃな。当たって怪我とかしてねぇ?」
「うん。大丈夫だよ」
「そっか、サンキュー」


じゃあな、と言って宍戸くんはコートへ戻っていった。特別な会話をした訳でもないのに心臓が煩い。長い黒髪をなびかせ歩く後ろ姿から目が離せない。
(どうしちゃったんだろう、わたし…)


ボールを見つけてもらった、それだけの事なのに何だか心臓が煩い。試合の後のようにバクバクいってるし笑った名無しの顔が頭から離れない。(何なんだ、この気持ち…)


それが恋だよ!
(甘くて酸っぱい初恋の味)





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