「ミズキちゃん、シリウス、あなたたちの弟が出来るわよ」
ある日、ヴァルブルカさんが満面の笑みで私たちに告げた。最近、調子が悪かった理由はこれらしい……。確か、弟のレギュラスは一つ年下だったな…そんな時期か。まぁ、シリウスは全くわかっていないようだが。
「どんな子が生まれるのかしらね」
「だー(きっといい子だよ)」
「そうかもね」
「!?(通じた?)」
日に日にヴァルブルカさんのお腹は膨らみ体調を壊すことも多くなった。ちなみに私は最近、つかまり立ちを覚えたところだ。やはり、今まで当たり前に出来たことが出来ないのはもどかしい。(ちなみにオムツの屈辱には慣れた)
「うーうー」
特に何もすることがなく、退屈な毎日。まだ、力もないし歩けないため知識を得ることもなかなかできない。そんな中、シリウスが私に懐いてきたことが今の一番の楽しみでもあった。
「なー(早く大きくなろうな、この生活はつまんないからな)」
「おー!」
「はー(分かってないんだろうな)」
「ミズキ、シリウス。シグナスおじさんのところに行くぞ」
シリウスとだらだら過ごしていたら、オリオンさんが私たちを抱えあげた。……シリウスが大爆笑してるのが気になる。何故だ。
「ヴァルブルカの具合が良くないんだ、いつ子供が生まれるか分からないそうだ。だから、その間おじさん家に行くんだよ」
なるほどな。全然知らないな。まぁ、もしかしたらブラック家の誰かに会えるかもしれないし。
「じゃあ、あまり気は進まないが…姿現しで行くか」
「ふー(ふむ…姿現しか…予想通りの気持ち悪さだ)」
「きゃっきゃっ」
「…(シリウスが分からん)」
オリオンさんは時間がないらしく、すぐに姿現しをしたのだが…――実に興味深かった。もう、何て言うか前の世界じゃ感じられない身体の全てが押し潰される感覚と、数回転した後の吐き気。これほどまでとは……。シリウスはとても喜んでいるが。
「シグナス、ミズキとシリウスだ」
「おお、良く来たね。歓迎するよ」
シグナスさんは、久しぶりだねなんて言ってるけど、見たこと無いぞ…このおじさん。
「ベラ、アン、シシー。君たちの従姉弟だ。仲良くしなさい」
…おおーここで主要人物に会えるとは。シリウスを殺した人もいるし。にしても、やっぱり血だな…みんな顔が整ってるな。
「かわいいあかちゃんー」
「ちょっとシシー、赤ん坊はあんまり雑に扱っちゃだめじゃないの?」
「ベラ姉さんもシシーもまったく…私、アンドロメダ・ブラック!よろしくね、ミズキ、シリウス」
「あ、ずるいーシシーも!」
「ちょって待ってよ!」
三姉妹に撫でられまくる私とシリウス。ちょっと、息苦しい。シリウスを見ると、また笑ってた。またか、お前……
「ねえーこのこたち、おきがえさせたらかわいいとおもうのー」
「いい案だね、シシー。アン、クローゼットで服を選びましょ」
「分かったわ」
嵐のように去っていく三人。……ここは、嫌だ。
「きゃっ」
「…ぶー(お前は呑気でいいな)」
(ちょっと、この服なんてどう?)(ベラ姉さんなんでそんな黒のドレスばっかなの?)
(シシーはねーこれがいいー)
((メイド服!?))