「……まれましたよ!奥さん、双子です!」
「聞いた?オリオン、私たちの子よ…」
「あぁ、ヴァルブルガ…よくやった」
聞こえる。フィルターに掛けたような声だけど、確かに聞こえる。
「うぁ……」
発しようとした声は、小さな泣き声となった。
「あらあら……」
……どうやら私は赤ん坊に生まれ変わったらしい。
赤ん坊になって、3ヶ月。ようやくこの世界にも慣れた。この世界は、本当に面白い世界だった。魔法が自由に行きかい、人々はそれを当り前のように使う。
「あー」
言葉が喋れないことだけが、めんどくさいのだが。
「あら、ミズキ。ミルクの時間かしら…シリウスもそろそろ泣きだすわね」
そして、重要なことなのだがどうもここはハリーポッターの世界としか思えないのだ。私が“ミズキ・ブラック”としてここにいること。両親がかなり金持ちで、双子の弟の名前はシリウスであること。それに、ちょくちょくマルフォイ家の人間が出入りする。
「うー(そうだな)」
ハリーポッターは、あっちの世界にいたころ、読んだ作品で割とお気に入りだった。あの、非現実具合がなかなか好きだった……が、実際自分がここにいるのは…―――もっと楽しいな。この世界を自由に変えることが出来るかもしれないのだ。しかしこの児童小説は傍目からは大冒険だろうが、自分が渦中にいるとなるとあまりいい気分はしないだろう。原作を変える…か。この一家の私の兄弟になる奴は、二人とも死ぬしな。死は避けたいよな。
「うぎゃぁぁぁぁん!!!!」
「もう、シリウスったら…ミズキはこんなに大人しいのに」
もうひとつ。私は精神は子供じゃないからなのだろうか、シリウスが異常にうるさく感じる。何が悲しくてこんなに泣くんだ。
「あ〜もう……ほら、いい子、いい子」
「ぴゃー」
アイツ、母親嫌ってたよな……十分、優しいと思うけどな。
(新しい生活に新しい家族)