―――私は、おかしな子供だったように思う。何にでも疑問を持ち、何かを学ぶことが好きだった。知識を吸収すること、一つ新しいことを知っていくことは何にも代えがたい喜びだったように思う。そんなことを思うのも、私は今命の危機に瀕しているからではないだろうか。
「お前、椎名株式会社の社長の娘だろ?おじさんたちさ、君の父親に酷い目に遭わされたんだよ」
見知らぬ人間に突然、学校の帰りに拉致されたと思ったらこれだ。ついてない。
「私が知るわけないだろう。父と私は違う」
「ふざけんじゃねーぞ!」
“ドカッ”
……いいのが入ったな。今までこのような状況に陥ったことはあるが…今回はやばいかもしれないな。眼が……本気だ。本当にこの社長令嬢という立場はめんどくさいことが多い。
「全く……レディの扱いがなっていないな」
「この女……自分の立場分かってんのか!?今、俺たちはお前を殺すことだって出来るんだぞ」
確かにそうだが……やはり私はおかしいのかもしれないな。“恐怖”とか、そんな感情は恐ろしいほどないのだ。
「……殺せばいいじゃないか」
「何だって?」
「本当に殺せるならな。私は、知識を得ることが好きだからな。黄泉の国の知識でも別に知識には何ら変わりない」
「何だ…コイツ」
「やっぱり、ここの娘はおかしいんですよ。書類にも書いてあったでしょう、頭はいいけど…少々考え方がおかしいと」
考え方がおかしいことなんて、当に知ってる。そんなことは、今更だ。
「早く殺るならやれ。その変わり、取引も何も無いだろうがな。結局は金がほしいんだろう?」
「チッ……おい、電話を掛けに行くぞ」
これだから頭の悪い奴は嫌いなんだ。
―――だけど。
「……ちょっと、やばいかもな」
殴られた場所から意識を持っていかれるようだ。痛みが襲う。……早く、医療班来ないだろうか。
(私が人と違うことなんて、もう覚えてないくらい前に気付いたことだ)