「目が覚めたかの」
次に目を開けて飛び込んだのは、長い髭が特徴のおじいさんだった。
「わあっ」
「ホッホッホ……そこまで驚かんで良かろうに」
いや…だってこの人アップだった。距離がもうめっちゃ近かったからね。
「初めましてじゃ、レイブンクローの姫君」
「え」
姫君……姫君って、私が?
「あの……私のことでしょうか」
「君以外に誰がおるんじゃ。わしはアルバス・ダンブルドア、よろしくの」
……やっぱり、ここ…ハリーポッターの世界なんだ。
「君は、長い間異世界に魂を飛ばしていた。身体は、ずっとホグワーツにあったがの」
意味が理解できない。
「千年も経っているのに、君の身体はずっとそのままじゃった。とはいえ、わし自身が君を見つけたのが最近なのじゃが」
「……身体って…どういうことですか」
「そうじゃな、確認した方が良いじゃろ。そこの鏡を見てごらん」
ダンブルドアが指さす方を見ると、今まで真っ黒だった私の髪は、さっきの世界であった女性と同じブロンドの髪に。瞳はブルーになっていた。
「何で……わ、私…」
「驚くのも無理がなかろう。君は今まで異世界にいたのだからの」
“異世界”とダンブルドアは私の世界のことを言うが、私からすればこのハリーポッターの世界こそが異世界なのだ。これを……どう受け入れればいいのか。
「君は……とある人物から狙われているらしいの」
「…とある人物ですか」
「左様。わしの現在の時代ではまだ存在しとらんのじゃろう。しかし、わしの頭の中ではレイブンクローの姫君を自分の時代で保護するようにという記憶が埋め込まれとる。きっと未来のわしがしたものじゃろうが……」
誰かが私を狙う。そんなこと……ないと思う。特に取り柄もない…ただの人間だ。それにこの話にはよくついていけない。
「そして……提案なのだが、是非ホグワーツに入学してみらんかね?レイブンクローの姫君」
「……私は、レイブンクローの姫君と言われてもピンときませんし、水城っていう名前があります」
「失礼した。いや、わしも嬉しいのじゃよ。創設者の娘さんなんてそう簡単には会えないからの」
……何か、この人苦手かも知れない。直感的にそう思った。
「君は魔法を使ったことがないのじゃろう?ならば、わしと明日はダイアゴン横町へ買い物じゃの」
「そう…ですね」
「とりあえず、君の部屋は用意するとして……―――」
酷く頭が痛い。理解が出来ない。否、理解しようとしていないのかもしれないと私は思った。だって……私は、ただの。ただの、取り柄のない…―――
指輪にまた締め付けられた気がした。