それは、突然だった。何が起こったかもわからず、ただただ流れに身を任せた。深い深い闇の中に、吸い込まれるように。
『……ミズキ、お前は……私のものだ』
『ならん!……来るのじゃ』
暗闇の底から二つの声が聞こえる。恐ろしい、だけどどこか悲しそうな声。そして、焦っているのが伝わる声。
「……っ」
意識がだんだんなくなる。強い力が私を引っ張る。
「痛っ……―――」
痛み出した指。……もう、わけがわからない。私は暗闇に飲み込まれるように意識を手放した。
「………ここ、は」
芝生の上に私はいた。花がたくさん咲いていて、現実世界では見ることが出来ないような光景だった。
『ミズキ』
私を呼ぶ声に顔をあげると、美しく、凛とした女性がいた。……どこか母に似ていた気がした。
「あなたは――――?」
『ロウェナ……ロウェナ・レイブンクローだ』
……レイブンクロー?レイブンクローって……確か、
『ミズキ、お前は愛されてる。才能だってあるのだからな、自信を持て』
女性は、知的な笑みを私に浮かべた。そして、私の指輪に目をとめた。
『道理でな。……これをお前がどこで手に入れたかは知らない。だか、いざというときにはこれを外せ。お前を守る鎖ともなるが……お前を縛る鎖ともなる』
「あの、言ってることが……―――」
『来るべき時になれば、全てが分かるであろう。我が娘、ミズキ・レイブンクロー』
……今この人は、何て言った?もしかして、これって……ハリーポッターに出てくる……寮の名前じゃ…?
『今は、お前の傍で何も出来ない自分が憎い。だが、私は……―――』
女性の言葉は最後まで聞けなかった。女性……ロウェナ・レイブンクローは光となって消えたのだ。
(残ったのは、彼女の面影)