「おはよう」

「おはよう。もう仕事?」

「そうなのー。締め切り近くて。かなわないったら」


私は、母と二人暮らしのごく一般的な女子高生だ。特にこれといって得意なこともないし、頭もたいして良くない。ただ、母は某有名大学の文学部を卒業して今では名の知れた作家になっているが。


「お母さん、今日帰り遅いから……シチューあっためて食べなさいね」

「うん」


いつから二人で暮らしてたかとか、そんなことはもう覚えてはいないけれど、。


『わたしもおかあさんみたいになりたい!』

『すてきなおはなし、たくさんかきたいな』


小さいときの私の口癖が何だか今になって頭の中に浮かんでは消えていった。私と母はいつだって似ていない。


「……朝ご飯食ーべよっと」


かじったパンが何だか味気なく感じた。









「水城ー」

「もとちゃん、おはよう」


学校までのいつもの道。





「で、ここにy=2x+1を代入してだなー」

「せんせえー黒板の文字見えませんよーどいてくださーい」

「え?あ、スマンスマン」


いつも通りの日常。





「水城、部活は?」

「行かないよー」

「幽霊部員めー」


いつもの会話。



私を取り巻く何もかもがいつもの状態だったはずなのに。どこか胸騒ぎがする。


キラリ


いつも嵌めている指輪が鈍く光った気がした。


(確かに、変わってないのに、どうして…)






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