「………うっ、うぅー」
誰かが泣いていた。誰だかは分からない。だけど、感覚的にわかることがある。これは、『私』だ。
「また泣いているのか、――――」
「サラ……」
白銀の髪、グリーンの目。美しいと形容せざる得ない男の人が『私』の頭を撫でる。
「だって……わたし、ママのこなのに…こんなにまほうがつかえない」
「そんなことないさ、いつかは…――――だって、ロウェナみたいになれるさ」
「ほんとうになれるかな……サラ」
「あぁ」
「ママは……わたしのこときらいにならないかなぁ」
『私』は不安だった。言葉に言い表せないこの焦り。何かに追い付きたくて、追いつきたくて。だって――――……
「ママは、りっぱなまじょなのに」
……魔女―?
「わたし、これじゃママのりょうにはいれないよ」
「それじゃあ、わたしの寮においで。歓迎するよ」
……寮?
「………た、じゃあ………リンに…――――」
まだ、駄目なんだ。まだ目覚めちゃ、あぁ―――……夢が遠い。
「水城ー何してるの、早く起きなさい」
私の意識は闇から引きあげられた。
(夢だと思う、だけど……どうしてあんなに鮮明に、)