※ぬるい性的表現があります














いかにも高級そうな光沢を放つ木製のデスク、革張りのソファ、清浄な空気を吐き出すと共に目を癒やす緑の葉はおおよそ任侠ものの映画に出てくる事務所とはかけ離れていた。
かろん、とコーヒーの注がれたグラスに浮かんだ氷が乾いた音を立てる。
「う…ッン、は…!」
それと同時に室内に響く吐息は臨也の耳に他人事のように届いた。

いつもはそれなりのホテルをとって行為に及ぶ四木が唐突に臨也に手を伸べたのは、あろう事か自らの仕事場たるオフィスだった。ソファの向こう側から顎を取られ、乗り出した男の形のよい唇が臨也の唇に重なる。
一瞬かち合った切れ長な瞳の奥を覗くことは出来なかったが、臨也は確かに四木に内在する炎を感じていた。それはきっと寒々しく感じるくらいの縹色を宿しながらも見た目に反した熱を放つ炎だ。そしてその火に巻かれて身を地に落とす哀れな獲物はさながら臨也自身だろうか。

歯列を割って緩慢な動きで臨也の舌を絡め取り、口内を蹂躙する四木のそれ。顎を捕らえていた掌はいつの間にか後頭部に回って眼前の獲物を逃がさないように固定する。
「…ふ、ぅ…っは…し、きさん…」
互いの間に銀糸を伝わせながら唇が離れる頃には四木の体はローテーブルを乗り越え、ソファにくったりと横たわる臨也の上に被さっていた。

「…っ…どう、したんです?いつもならこんな所で、」
「こんな所とは随分ですね、折原さん。ここはうちの事務所で私の管理する部屋なんですが」
乱れた呼吸を整える合間に常とは違う早急さへの疑問を投げかけてもそれはあっさりと揶揄の響きを以て返される。

「事務所って言うなら尚更、まずいでしょう。誰に見られるかわかったもんじゃない」
「それなら問題ありませんよ。ここには近づかないように言ってある。…ただし、あまり妙な声がしたらわかりませんがね」
淡々と言葉を紡ぎながら四木の手は休まることなく臨也を押さえ、先程まで重なっていた唇が今度はその細い首筋に落とされた。
「…んっ…は…ぁ、」
薄く色付く肌の上に更に色濃い華が咲かせながら忍ばせたしなやかな指は的確に臨也の敏感な部分をなぞり、甘い吐息を漏れさせる。
「聞こえていなかったんですか?折原さん。あまり声を出すと聞こえますよ」
耳元で囁いた低い声は顔を見ずともわかる程に愉悦に満ちた響きを持っていて、四木がわざと臨也の羞恥を煽ろうとしているのは明らかだった。

しかし四木の思惑に反して、折原臨也という人間はそれで頬を赤らめる程初でも素直でもない。それは多分四木も予想した上での試みだったのだろう、彼らの仲はそう浅いものではない。
その四木を以てしても、目を奪われずにはいられなかった事を誰が責められるだろうか。そう問いたい程に、黒いシャツの襟を引き寄せて軽いリップ音を立てるだけの口付けを送った男の笑みは傾国すら謳われそうな嫣然としたものだった。

「いいよ、聞かれたって。して?四木さん」
「…可愛げのないガキだな、本当に」








孕んだ熱の赴くまま









四木臨企画「25時」様に提出させて頂きました。四木さんの口調が変わる瞬間はいいと、思うんです…!







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