※前回の養子静雄(16)×保護者臨也(23)過去話
相変わらず捏造万歳!
大人は嫌いだった。
幼い時に両親を亡くした俺達兄弟は頼るべき親類もいない事から施設に預けられていた。
初めの内はいい。
周りも同情とはいえ優しくしてくれたし、気遣ってくれた。
しかしそれは俺が施設の仲間と喧嘩をして重量のある遊具を持ち上げた時から一変する。
俺に貼られたのは化け物というレッテルと畏怖の視線。
常に腫れ物に触れるような扱いはますます俺を苛立たせるだけでしかなかったけれど、気付く大人は誰もいなかった。
唯一の救いは弟の幽がそういう扱いをされなかった事だろうか。異質な化け物の弟なのに正常で常識あると判断された幽はいっそ憐憫の対象となって周りに一層可愛がられ、数年後には裕福な家庭に引き取られた。
今は幸せに暮らしているらしい。
月に一度くる手紙に書かれている内容に安堵すると共に俺に対する気遣いには心苦しかったが、俺はその頃には既に誰かに引き取られる事なんて諦めていた。
もうあと何年かすれば俺は働ける年齢になる。
それまで耐えて、その後はここを出て独りで生きていこうと、そう思っていた。
けれど、
「平和島静雄くん?」
俺の前にあいつが現れたことで世界は一変した。
「……」
「じゃあこれからは折原静雄だ。」
警戒心も露わに睨みつけながら頷く俺に対して当時まだ学ラン姿だった臨也は天使のような笑顔で告げる。
「は…?!」
「今日から君はうちの子だよ。俺は両親の代わりに君を迎えにきたんだ。」
初めに感じたのは、疑惑の念。それは次にある推測へと行き当たった。
「あんた、俺の事知らねぇんだろ」
たまにいるんだ。容姿だけで引き取るとか言ってみたはいいけど施設の奴らから俺の異常な力の話を聞いてやっぱり止めた、って奴が。
こいつもどうせそんな口だろうと、自らその事を教えてやろうとした俺の言葉は目の前の薄い唇から出た台詞に遮られる。
「あぁ、君が喧嘩人形とか呼ばれてるって事について?知ってるよ。そんな事」
事も無げに漏れたのは俺には信じがたい内容で、返す言葉なんて出てこない。それをどう勘違いしたのか臨也の口からは畳みかけるように言葉が紡がれる。
「君が人より怪力だろうが何だろうが関係ないよ。俺は君を気に入ったってだけの事だからさ」
それは、俺が一番聞きたくて、でも諦めていた言葉。
自然と溢れた涙を拭ってくれる指先すらも綺麗で、あの日俺は初めて恋をした。
終わらない恋になれ
調子に乗って続いてみました。臨也は初めは勿論利用するつもりで近付いてみたんだけど段々情が湧いて逆に裏の世界から遠ざけようとすれば良いと思います。