「臨也さん」

いつもと同じはずの彼に違和感を覚えたのは何故だったろうか。
普段は物を上手く言えない子供のようなのに、今日は妙にはきはきとしていた言葉の発し方か。それとも気の弱さをそのまま表したようなおどおどしたものではない、しかし貼り付けたような完璧な笑顔か。

恐らくそのどちらもだ。

そう気付く前に腹部から伝わる電流によって、俺の意識は途切れた。
「おやすみなさい」









次に重い瞼を開けた時に視界に飛び込んできたのは多少年代の感じられる木目の天井で、どこか見覚えのあるその場所を確かめる為に身体を起こす。しかしそれは起こそうとした、ところまでで終わってしまう。

不自由な手足にようやく気付いてみれば自分でも痩せぎすの自覚のある手首には無骨な銀色を反射する手錠が当然のようにきっちりと嵌っていた。感触からいって足首も同じ状態だろう。

どうしてか首も妙に動かし辛い状況の中で何とか周りを確認すれば、そこは数ヶ月前に一度だけ訪れたことのあるアパート。
竜ヶ峰帝人の、住まいだった。





「あ、目が覚めました?臨也さん」
程なくして扉の開く音と共に現れた少年は、全くもって自然な笑顔で俺の前にしゃがみこむ。その「普通」である事が現状を把握した上では酷く異常に映った。
「これは…どういう事かな、帝人くん」

まだ少し痺れの残る腹部を不自由な手でさすりながら剣呑な視線を送ってみても彼に堪えた様子はない。
「どう、とは?」
「全てだよ。何故俺が君に危害を加えられなきゃならないのか、何故俺は此処に寝かされてるのか、何故俺は拘束されてるのか」
畳みかけるように糾弾するが帝人くんは顔色一つ変えなかった。それどころか何を愚問をとでも言いたげに一瞬目を丸くしてから、笑みを深める。
「それは、これから僕が臨也さんを飼うからですよ」

さも愉しげに歪む唇は俺の視界を黒く塗り潰す言葉を紡いで、同時に手錠とはまた違う、金属音。


室内にある小さなテレビの暗い画面の中には、赤い首輪に鎖を繋がれた男が横たわっていた。





(ペットには首輪がいるでしょう?)








スランプの息抜き帝臨でした。帝人様は最強。
監禁のち調教フラグ乱立ですね。静臨前提だと私が喜びます。



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