※バカップル=キャラが色々崩壊してます









「いーざーやぁぁ!死ね!」
自販機が舞う、ポストが舞う、まるで玩具やハリボテのように行き交う光景は池袋ではよく見られるものだ。
「あっはは!相変わらずの馬鹿力だよねぇ、シズちゃん。いっそ化け物って感じじゃない?」
「殺す。叩き潰して殺す!」
それらの標的となっている男は間一髪で猛攻を避けながら手にしたナイフで虎視眈々と反撃の機会を狙う。

お互いの身体には標識やらポストやらが掠った傷跡やナイフによって切り裂かれた痕跡が見えるが本人達が気にした様子はない。そしてここまでの非日常を見せつけられている通行人達もまた、関わり合いを避けるように無関心を決め込むのだ。

これは既に池袋の日常と化しているのである。






しかしこの二人が作り出す光景はJR線で僅か一駅、6分離れた地では激変する。
「臨也、俺だ」
高級マンションのドアを勝手知ったる他人の家とばかりに合い鍵を使って開けた静雄は昼間の殺気など何処へやら、穏やかな風情で廊下を進んだ。室内に踏み入れながら声をかければ途端に奥から響く足音。

「シズちゃん!待ってたよ」
駆け寄ると同時に飛びつくようにしがみつく臨也の身体を静雄は軽々と受け止めて同じように抱き返す。
「昼間は悪かったな、お前が他の男と話してるの見てたら頭に血が上っちまって…」
愛おしみを込めて絹糸のような髪を梳く静雄の眼差しは優しく、つい6時間程前まで視線だけで人を殺せそうな目つきをしていた男とは到底思えなかった。

「いいんだよ。あれは単なる取引相手でシズちゃんの足元にも及ばないっていうか比べる対象にもならないけどさ、シズちゃんがヤキモチ妬いてくれたのが嬉しいし。それより…痛くなかった?」
自らの髪を撫でつける手をとって覗き込んだ甲にはうっすらと血の滲んだような痕があって、臨也はそれを慈しむように撫でる。
「これくらい平気に決まってんだろ。それより、俺こそ思い切り標識投げちまって…掠ってたよな」

ボロボロになったシャツは着替えたのだろうか、臨也の服は真新しい物になってはいたがその下には確かに小さな傷が存在していた。
「気にしないでよ、あんなの。シズちゃんから受ける痛みは俺にとって全部快楽なんだからさ」
「ダメだ。お前の身体に傷痕残すなんて、6時間前の俺でも許せねぇ」

ベッドに行く時間も惜しむように臨也のシャツを脱がせ、革張りの大きなソファに横たえた静雄の言葉は自らに対しても酷く理不尽なもので思わず臨也は笑ってしまう。
「何笑ってんだよ」
「なーんでも?じゃあさ、別の痕いっぱいつけてよ。6時間前のシズちゃんに負けないくらい」
無邪気な笑みを消して口端を上げた臨也は壮絶なまでの妖艶さをもっていて、自然と空唾を飲み込んだ静雄もまた、獰猛な肉食獣のように笑んでみせた。
「…望むとこだ。覚悟しろよ?」


一方での日常がもう一方では非日常。よくある事とはいえ、池袋の住人達は知る由もないだろう。それぞれ違う意味での最強を欲しいままにする二人の、こんな歪な関係になど。




まるで喜劇な白昼夢









ささえみ様から頂きました
「池袋だとガチでぶっ殺す!!死ね!!いざやああああ!!あははは静ちゃーんっ!!なのに、二人きりになるとさっきはごめんな、静ちゃんこそ痛かった?ばか手前の方がいてえだろうが、いいもん静ちゃんがくれた痛みは全て快楽だから、とか池袋→殺伐、二人きり→ラブラブっていうシズイザの王道たる王道」
というリクエストでした。王道たる王道…!!素敵な言葉です(笑)バカップルが過ぎて自分でも収拾がつかなくなった感がありますがバカップル部分を書くのが大変楽しかったです。
ささえみ様、素敵なリクエストありがとうございました!





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