「口ん中が甘ぇ」
ようやく落ち着く自宅という空間に帰ってきて、俺はソファへと沈み込んだ。
あの後、下着だけ買ってさっさと帰るのも味気なかった為に適当に昼食をとりデザートという名目で臨美が指定したクレープを食べたのだがそれが予想以上に甘かった。

甘いのが嫌いという程ではないが常日頃苦味のある煙草ばかりを口にしている身としてはあのだだ甘い食べ物は辛いものがある。結局自分の分を食べきった臨美に手伝ってもらったが、しかし一体あの細い身体のどこにあの量が入るんだろうか。昼飯はろくに食わねぇ癖に、あいつは。


そんな臨美は今早速買ってきた下着を着けに脱衣場に引っ込んでいる。
帰った途端に袋を持っていそいそと行った辺り新しい下着が相当嬉しいらしい。と、考えているとドアの開く音がして軽い足音が響いた。

「お待たせ、シズちゃん…どう?」
「…〜、手前…何つー格好で…」
出てきた臨美は今日買った下着と揃いの薄っぺらい透けたキャミソール(後で聞いたがベビードールとか言うらしい)を纏っただけの姿で、俺は思わず上げかけていた顔を伏せる。
「見せなきゃ買ってきた意味ないじゃない。それとも、似合わない?」
そんな俺になんてお構いなしでソファに座る俺の膝の上に向かい合う形で更に腰を下ろすこの女が恨めしくなってきた。わざとやってんだろ、手前。

純白の清純な装いに反した透け感と肌の露出具合は何とも言えない危ない色気を醸し出していて、色々とヤバい。

「臨美」
「んー?何?」
そんな俺の心情を知ってか知らずか…確実に知っている臨美はゴロゴロと甘える猫のような仕草で俺の胸元へと顔を擦り付ける。
「手前、離れろ」
細い肩を壊さないよう注意しながら引き剥がすと途端に目の前の秀麗な顔立ちに不快感が満ちた。

「…やだよ」
冷たく言い募ってそっぽ向く姿は何となく悲しげにも見えて自分が悪い事をしているような気分になる。
けれど俺の行動は男的に正しいはずだ。婚前交渉云々言うつもりはないがこいつはもっと自分の身体を大切にすべきなんだ。
「ねえシズちゃん。奥手もいい加減にしてくれないと私もそろそろ我慢の限界なんだけど」
そこまで考えた瞬間、俺の思考を読み取ったようなタイミングで薄い唇が開かれた。

気付けば目前まで不機嫌そうに歪んだ顔が近付いていて、その柔らかな唇はわざとらしく焦らすように俺の目尻や頬、口端に落とされる。
「お、まえ…っ」
「何の為にシズちゃん好みの下着選んだと思ってるの?いいから、早く脱がしてよ」


堪忍袋より強いと自負する俺の理性の糸もここまでされて、そこまで言われて耐えきれる程頑丈ではなかったらしい。

目の前の女の望み通りに背に回した手でホックを外しながら、心中で無残に切れたその糸に合掌した。






音速イノセント
(切れる理性の速いこと!)










A音様から頂きました「愛情窒息死の設定で二人で下着を買いに行き、シズちゃんが選んだ下着を穿いて脱がされる話」というリクエストでした。
脱がされているかどうか怪しいところですが、やっぱり純情×小悪魔が静臨♀の基本形と思っているようです。しかし静臨♀書くのは物凄く楽しいです。臨美さんは女の子な分臨也さんより素直に動いてくれる気がします。A音様、素敵なリクエストありがとうございました!








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