「シーズちゃん、何してんの?暇してるよね?せっかくの休日を自堕落に過ごすなんて勿体ないよ。暇してるなら俺と遊ぶっていう実に有意義で実りのある事にその時間を費やすべ、き…あれ?」
予め作っておいた合い鍵を作ってドアを開け、靴を狭い玄関に投げ捨てながらまくしたてるように言葉を紡いで室内に入るとそこには見知った金髪の姿はない。
「お久しぶりです、臨也さん…」

その代わりそこにいたのは秀麗な顔から一切の感情を削ぎ落とした青年で、一瞬面を食らってしまった。
「幽くんじゃない。久しぶりだね、まあ毎日のようにテレビや雑誌で見てるから俺は久しぶりって感じもしないけど…元気そうで良かった」
「はい、おかげさまで」

慎ましやかに置かれたテーブルの向こう側にちょこんと座る幽くんの斜め右に腰を下ろして周りを見回してみるがやはりそこに黄金色は見受けられない。
それから幽くんとひとしきり今公開されてる彼の主演映画の話や、この間雑誌に載っていたインタビューの話をして、俺はついに抱えていた素朴な疑問を投げ掛けてみた。

「そういえばシズちゃんは?」
「兄貴は昼の材料がないからって近所のスーパーに行きました。今日は俺が急にオフが入って、押し掛けたので」
「ああ、なるほどね」
それで合点がいった。あのブラコンのシズちゃんが幽くん一人を残して出掛けるなんておかしいと思ったんだ。

「兄貴がいないと寂しいですか?」
「…え…?」
そんな事を考えていたから、幽くんから返された質問に上手く反応出来なくて思わず聞き返す。いつの間にか幽くんは俺の隣にまで移動してきていて、その整った顔立ちが間近にある事に焦った俺が顔を仰け反らせてもそれは追ってきた。

「俺と話してても臨也さんはどこか上の空だから。…俺が兄貴の弟だから映画や雑誌もチェックしてくれてるんですか?」
「ちょっ…幽くん、顔が近…」
「答えて下さい」

触れてしまいそうな位置まで迫った彼の瞳には珍しく表情がありありと現れていて、その真剣さに俺は柄にもなく戸惑ってしまう。
そんな時だ、建て付けの悪そうな音を響かせてドアが開いたのは。
「ただいまー…?幽、誰か来てんの……」

静寂が満ちる部屋に買い物袋の落ちる音と、ぷつりと、何かが切れたような音がしたのは決して俺の気のせいではないだろう。

気のせいだと思いたかったけど。












前後編にわけました。次こそは平和島サンドします!







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