※R18
薄暗注意報













折原臨也は自分の性癖を正しく理解している。彼は所謂痛みから快感を得てしまう人種で、一言で表すならばMだ。
けれど目の前で自分を組み敷き、突き上げる男にはそのような趣向はないと考えていたし、それは言わば気まぐれで。

「ッんあ、ぁ…っシズちゃ…あっふ…」
絶頂が近い事を感じ取った臨也は自分の腰を掴んでいた静雄の手を手探りで掴むと上に導き、妖艶に微笑む。一方の静雄は腰を緩く動かしながらも訝しげに手の向かう先を見つめていたが、それが落ち着いた場所を見て目を見開いた。
「臨也、手前何…」
「イく時にさ、首…っ締めて…よ。そ…すると、すごい気持ちイイんだ…」

臨也の恍惚とした表情は静雄に眩暈を覚えさせるには十分なものだったが、彼はその異常性にすぐに我に返って手を払いのける。
「ふざけんな…何で俺が手前の変態的な趣味に付き合わなけりゃ」
「…っいいじゃん…首締まってると下も締まるから、絶対シズちゃんも…気持ち良くなれるよ…?」

その甘言に惑わされた訳ではない。彼の言葉の怖さを静雄は誰より理解している。
しかし普段なら見られないあえかなその表情が、倒錯的なこの行為自体が、静雄の理性を緩やかに溶かしていった。


僅かに震えを帯びた手で宵闇に浮かぶ白い首筋を包み込めば、それは静雄でなくても簡単に手折ってしまいそうな程に細い。
「ッん…は、っあ…ッく…」
力を込め過ぎないように最大限に加減をしながら呼吸器官を締め付け、止まりかけていた動きを再開させると押し込めたような喘ぎが零れた。
「…これで、満足…っかよ」
臨也の言葉通りに彼の内部は静雄自身を痛い程に締め付ける。

「シ、ズ…ちゃ…ア、んん…イ、」
自分が化け物というのならば目の前で喘ぐ男は魔物だ。静雄は眼下の存在を見つめながらそんな事を思った。淫らに、妖艶に人を誘い快楽の波に堕として抜け出せなくさせる魔物。

それ程までに臨也の苦痛の中に見え隠れする恍惚は静雄の情欲を誘う。その情欲は忽ち育って、静雄の中で暗い欲望が産声を上げた。
「ひ…っン、は…ッあ…も…イっちゃ…っ…?!」

絶頂を前に震える臨也の自身を静雄の手が不意に鷲掴む。
その指先は達する直前だった根元をきつく握って、欲望を吐き出せない苦しさと痛みを臨也に与えた。
「や、やだ…ッシズちゃ…離、し…」
「ダメだ。まだイくなよ」

臨也が手を引き剥がそうともがくが片方の手で首を、もう片方で自身を抑えられている体勢ではろくな抵抗など出来るはずもない。
それどころかますます強く握られた自身に喉の奥からは悲鳴に似た嬌声が漏れ出て。
「ひ…ぁ…ッ!やだ、何で…」
「もっとよがれよ。痛いのが気持ちイイんだろ?」
先の言葉に嘘はなかったのだろう。臨也の自身は痛みの中にも的確に快楽を見出してその硬度を増している。
「こんな硬くして、手前本当に変態だな」
「シズ…ちゃ…には、言われたく…な…っ」

未だに緩やかに呼吸を奪われている所為か、荒く息を継ぎながら楽しげに自らを苛む男を睨む臨也は、自分が起こしてはいけない何かを呼び覚ましてしまった事を知った。










「あッ、く…!ン…は…っふ…も、や…だ」
「嫌だ?どの口が言ってやがる」
楽しげに口端を上げて突き上げる静雄の手には未だに臨也の二つの急所が握られていて、随分と長い間続いているように思えるその責め苦に生理的な涙が白皙の頬に伝う。
「…っ俺、は…ソフトなマゾ、なの。シズちゃん…みたいな…ッア…真性のサドとは…違…ひっ…!」
「悪かったなぁ、真性のサドで…よ…ッ!」
好きなようにされているのが悔しいのか、こんな状況下でも悪態をつく臨也の奥を抉ると弓なりに跳ねる背。
「あ…ッや、それ…っダメ…!ん、あ、ぁー…ッ!」
根元を戒めながらぐりぐりと鈴口を弄び、最奥を穿って首に置いた手に軽く力を込めるとついに臨也は白濁を放出することなく頂点に昇りつめた。そんな臨也の中に静雄も熱い迸りを吐き出す。

余程衝撃が強かったのだろう、達すると同時に糸が切れるように気を失った臨也の首から手を離し、絹糸のように細い黒髪を一撫ですると静雄は普段は見せない闇を宿した瞳を細めた。

「お前が気付かせたんだ。責任取れよ?臨也」



気まぐれは時として、とてつもない結果を招いてしまうという事をこの日臨也は改めて思い知ることになった。その結果は、招いた本人すら覆す事が出来ないという事も。

彼らの友人たる闇医者の言葉を借りるとすれば、そう。全ては身から出た錆なのだ。






暴挙にもならない










10000hit御礼、桃子様より頂きました
『若干M体質ないざやが、イク寸前に静ちゃんに「首、しめて…」とか言い出すエロ的なもの。そこからサドに目覚めてしまう静ちゃん』というリクエストでした。
予想以上にほの暗くなってしまいまして申し訳ございませんが、桃子様に捧げさせて頂きます。煮るなり焼くなりご自由にしてやって下さいませ…!






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