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約束は小指より薬指がいい


それなりに乱れた黒いシーツ。(森山さんの趣味。)
足元に追いやられた同じ色のタオルケット。(タオルとの違いが俺にはよくわからない。)
すぅっと呼吸すると体に入ってくる森山さんの匂い。(長いカタカナの名前の香水。俺は嫌いじゃない。)
目ヤニのついた目を擦りながら瞬きを繰り返す。森山さんがよく見えた。(俺に綺麗な顔を背けて寝てしまっている。安眠だろうか。)

微妙に浮き出た背骨をなぞってみても、森山さんはもぞりともしなかった。

起き上がるとがくり、重力に従うように頭が落ちた。まだ眠い。
カーテンは街灯の光だって透過させない。そこそこの暗闇。手探りで枕元の携帯を光らせた。午前二時二十五分。

「まだねえう...」

乾いた声。つぶやいた唇で森山さんにキスをすると、ばちり、森山さんの目が開いた。

「...おはようございます」
「...今何時」
「にじにじゅうごふん」
「...まだ寝れる」

あ、俺とおんなじ事言った。笑うと森山さんも体を起こして、「何笑ってるんだよ」と俺の頭を軽く小突く。なんでもないっすよ、幸せなだけで。

「ほら、お前ももう寝ろよ」

ごつごつした手のひらを俺の頭に乗せて、撫でるように力を込めて枕に沈めた。俺はそれに逆らわない。

「手、あったかいっすね」
「寝起きだからな。でも寒いよ。タオルケット、どこ?」
「あし」
「...寝相悪いな」
「お互いさまっす」

俺達二人に、丁寧にタオルケットをかけた森山さんも体を倒す。
寒いという言葉を鵜呑みに、俺は森山さんに正面から抱きついた。あったかいでしょ。即座に暑苦しい、と蹴りをもらった。

「ガキかよお前は」
「ガキじゃないっす」
「どうだか」

馬鹿にしたように笑われる。そりゃ、森山さんに比べたらガキかもしれない。でも俺だってちゃんと成長してる。いつまでも高校生のままじゃないし、森山さんのそばにいるために、恥ずかしくないカイショーだって持ってる。森山さんだってわかってるくせに。
俺は悔しくて、森山さんの左手をとった。


「結婚指輪、なんで左手の薬指につけうか知ってますか」
「何、いきなり」
「まあ、いおいおあうんすけど、左手の薬指って、十本あう手の指の中で一番ちかあがないあしくて。だかあ二人でそのちかあを補って支えあおうって」

沈黙。

「オマンチックでしょう」
「...」
「ガキだったあこんなこと知いませんよ」
「...」
「おえたちも支えあいます?」

左手の薬指の根元にそっとキスをする。

「うるせーばーか」

俺の両手の中から抜け出して、また背を向けてしまった森山さん。
今度はそのまま抱きしめた。

「おえばっかじゃなくて、ちゃんともいやまさんの事幸せにしますかあ。約束っすよ」




未完成の青様に提出。
なんか恥ずかしい。
131026




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