朧月夜-伍- ※軍人臨也×男娼静雄 |
夜闇に包まれた座敷を、行灯の柔らかな光だけが妖しく映し出ている。 かっちりと着込まれた軍服をくつろげると、静雄は臨也の足の間に身体を割り込ませ、頭をもたげかけていた熱をためらいもなく口に含んだ。 「…………ん、」 静雄の熱い舌に、思わず臨也の口から色を含んだ吐息が零れ落ちる。さすがにこういった職で生活を繋いでいただけのことはあり、静雄の口淫は実に的確に臨也の弱いところ攻め立てていった。確かな質量を持ち、雄々しく主張を始めた亀頭を舌先でいたずらに弄び、かと思えば一気に喉の奥まで咥え込まれ、熱い粘膜の感触に腰が蕩けそうになる。眉根を寄せ、快感に絶える臨也の表情を見て、静雄は満足げに微笑んだ。 「っ、シズちゃん……」 「……きもち、か?」 ふと動きが止まり、臨也が固く閉じていた瞼を持ち上げると、ゆるゆると指先で自身の性器を弄ぶ静雄と目が合った。溢れ出した先走りと、静雄自身の唾液とでまみれた唇が てらてらと艶かしく光り妖艶に笑みをかたどっている。 これだけでもかなり欲を煽る光景だな、と臨也は熱に浮かされた頭でぼんやりと考えつつ、静雄の柔らかな髪をそっと撫でてやる。 「ん、気持ち良いよ。ねえ、俺もシズちゃんにしたい」 臨也の唐突な申し出に、静雄はぱちぱちと瞬きをした。 「……っ、俺はいいって」 「どうせなら一緒に気持ちよくなろう?」 渋る静雄の手を引いて布団に横になった臨也は、自身の顔をまたぐよう指示をする。いわゆる二つ巴の体位をとらせると、目の前に曝された静雄の色素の薄い性器に性急に舌を這わせた。 「ぁっ……!」 途端にびくびくと跳ね上がり逃げ出しそうになる細腰を掴み、わざと卑猥な水音をたててしゃぶりつく。自身を愛撫していた静雄の口からは喘ぎ混じりの熱い吐息が吐き出され、臨也のそれを一層煽った。臨也も負けじと先端の括れを指の腹で捏ねながら舌で裏筋をくすぐる。くぅん、と子犬のように鼻を鳴らした静雄は、まるで強請るように腰を揺らした。 「ふぅっ、ん……じゅ、はぁ……っぁん!」 「シズちゃんの……もうぐちゃぐちゃ、だね」 とろとろと先走りを溢れさせる割れ目を抉るように舌先をすぼめ、ぐり、と抉ってやると、静雄の背は大げさなほどに跳ねた。 「あぁっ、いざっ……!そんなっ…したらぁっ……ひん、ぅあっ!」 元来、快楽に弱い性質の静雄は臨也の舌技に翻弄され、上体を支えきれずに腰だけを高く突き上げたような格好で臨也の熱に縋り付いている。 「こっちにも欲しいんじゃない?」 眼前で収縮を繰り返す蕾を指先でなぞると、静雄は腰を捻って逃れようとした。 「そ、こっ!そこ、は…ぁあっ!駄目っだ、……はぁっ、ぁ!!」 「どうして?シズちゃんのここ、欲しいってぱくぱくしてるよ」 「言、うなぁっ……!あぁ、んっ……んん!」 唾液で湿らせた人差し指を蕾に押し当て、ぐにぐにと押していると、静雄は焦ったように臨也への愛撫を再開させた。 「ふふ、さっさと俺を達かせようって魂胆?」 「ふぅっ…んん……ふ、はっ…はぅ、じゅ……」 以前、自分一人だけが達かされてしまった汚名を返上したいのであろう。なんとか優位に立ってやろうと懸命に愛撫を繰り返してはいるが、臨也は口端を吊り上げた余裕の表情を崩さない。 「残念。軍人はそれなりに忍耐強いんだよ、ね」 「ひ、んああぁっ」 人差し指の第二関節辺りまでを一気に差込み、ぐるりと中を指で探るように動かす。 「ぁっ……んんッ!!」 きゅうきゅうと締め付ける内壁を擦るように刺激を与えながら更に中指を追加すると、ごつごつと節くれだった指の骨が静雄の前立腺を掠めたらしく、臨也自身を必死に愛撫していた静雄から鼻にかかった甘やかな悲鳴が上がる。 「あっ、あぁ、……いざ、やぁ!や、…ぁん、っん!」 「ほら、シズちゃんお口の方はどうしたの?そんなんじゃ達けないよ」 抜き差しする指の速度を上げつつ、静雄が反応した一点を時折爪先で引っ掻いてやると、過ぎる快楽に抗うように静雄は奥歯を噛み締めて鼻にかかった喘ぎを零した。臨也の目の前でビクビクと震える陰茎からはとめどなく先走りが滴り、臨也の胸元を淫らに濡らす。 「そ、なされ…たらっ……!出来ねぇ、からっ…やめ、ぁっ!ひぃ……ん!!」 「俺としてはシズちゃんの喘ぎ声だけでも達けそうだから良いんだけどね」 「っかやろ、俺にも…ん、させろ、よ……」 必死に息を整えようとしている静雄をもっと弄り倒してやりたいと思いつつ、なにやら唐突に発せられた健気な一言に気をよくした臨也は、静雄の内部を傷つけないようにゆっくりと挿入していた指を抜いた。 「は、はぁ……ふ、」 肩で息を切る静雄は震える肘で懸命に身体を支え直し、臨也自身を掌で扱きたてながら先端部分を舌先でちろちろと舐め始めた。臨也も可哀相なほどに張り詰めた静雄の熱に口付け、丁寧に愛撫を施してやる。荒い呼吸と、欲に濡れた音が互いの鼓膜を侵食していく。 「んぅっ……は、ぁっ…ぁ、」 「ん、は……シズちゃん……もうっ…」 「……っれも、も、……んんっ…んぅぅ!!」 くぐもった喘ぎと共に静雄の太股がぶるる、と震え、ほぼ同時に臨也も静雄の口内に白濁を吐き出した。 → |