DOLLS
※臨←デリ←日々
日々也さんが不憫
ぬるいSM要素有
規則的に繰り返される振動音と、熱の篭もった荒い息遣い。色味の少ないシンプルなベッドルームを満たすのはただその二つの音だけだ。
中途半端に脱がされたシャツで両腕を後ろに拘束され、身動きの取れない状態でバックから極太のディルドに犯される。もう小一時間この状態が続いていて、快楽に慣らされた身体はとうに限界を迎えていたが、トロトロと先走りを溢れさせる性器はネクタイできつく戒められ、欲望を吐き出す事は叶わない。行き場の無い熱が体中を暴れ回り、俺は馬鹿みたいに甘ったるい声を上げ続けた。
「んッ、あぁ、……ひぅ、ぁっ、ああぁ!」
低く唸りを上げるバイブレーションに呼応してゴリゴリと内壁を掻き回すそれは、俺のお気に入りの玩具の一つだ。日々也はこんな物使った事がないんだろうとな、と特に期待もせずに臨也さんが好んで俺に使った玩具を手渡したのだが。俺の予想に反して、奴は意外にもすんなりとそれらの器具を使いこなしてみせた。
少しだけからかってやるつもりだった。初心なこいつを弄んで傷つけて、せせら笑ってやるつもりだった。なのに、余裕ぶっていられたのも最初の内だけで、俺はあっという間に日々也の愛撫に翻弄され、拷問にも近い快楽にドロドロに溶かされることとなった。
「気持ち良いですか?」
「は、ふっ……ァッ、…もち、い……っ」
アナルに深々と突き刺さったディルドをいたずらに指先で押し込められ思わず腰が跳ねる。機械的な振動音を響かせながら中を抉る塊をゆっくりと抜き差しされれば、押さえの利かない身体はビクビクと歓喜に打ち震えた。
「こんな物を銜え込んで喜ぶなんて……本当に厭らしい方だ」
注挿に合わせるように揺れる腰を見て、日々也は低く冷たい声で呟いた。
「淫乱」
「……ひんっ!」
パンッ、と乾いた音と共に尻に鈍い痛みが走る。叩かれたのだ、と頭が理解するよりも早く、続け様に同じ箇所に掌を打ち落とされる。「変態」「淫乱」「アバズレ」――鋭い痛みに重なるように、冷えきった声が詰り続ける。じんじんと熱を孕むような痛みも、胸を指すような言葉すら、今の俺にとっては快感にしかなりえない。
「んんんぅ……っ!!」
ひくりと腰が震え、もう何度目になるか分からぬ空イきに手足が突っ張った。
「おや、またイってしまったのですか?」
咎めるように言いながらも、日々也の手は休む事無く愛撫を繰り返す。ぐちゅぐちゅと卑猥な音を立てながら中に埋められた玩具を抜き差しし、だらしなくカウパーを垂れ流す性器を容赦なく揉みしだかれ、俺は狂ったように身を捩って喘いだ。
「……あ、ひぃッ!!ごめ……な、さっ…あぁッん!!」
小刻みに痙攣を繰り返す身体はもう自制する事は不可能で。頭がおかしくなりそうな痛みと快楽に、意識は完全にオーバーヒートしようとしていた。
「……デリック」
「ふ、うぅっ……ごめん、なさい……ごめんなさ、ッ――」
涙と涎まみれの顔をシーツに埋めて、嗚咽を押し殺していると、それまで絶え間なく与えられていた刺激の一切が止んだ。
不自然に静まり返った寝室には、俺の中を犯す無機質な振動音だけが妙にリアルに響き渡っている。ぐずぐずに蕩けたアナルから、暴れまわるディルドをゆっくりと引き抜き
日々也がスイッチを切った事で、室内は完全な静寂に包まれた。
質量を失ったアナルがひくひくと物欲し気にヒクつくのを感じ、焦らされるのはあんまり好きじゃねえんだけどな、と鈍った思考を巡らせていると、柔らかな温もりが身体に纏わりついた。鞭のように身体を打った腕は、まるで労わるように背を撫でる。
「日々、也……?」
思わず目を丸めて、ぎゅうぎゅうと身体を抱きすくめる男を肩越しに振り返る。と、彼は俺の肩に鼻っ柱を埋めてぽろぽろと涙を流していた。
「ごめん、なさい……」
「……何、」
言うなり、俺の腕の拘束を解いた日々也に身体を引っくり返され。次の瞬間にはもう唇が重なっていた。熱い舌は性急に口腔内へと進入し、息を継ぐ暇もない程に深く長いキスが続く。やはりぎこちなく、俺にとっては生ぬるいと感じられる口付けだったが、日々也なりに必死に俺を満足させようとしている事だけは伝わってくる。
唾液の糸を引きながらそっと離れていった唇をぼんやりと目で追っていると、日々也は涙でぐしゃぐしゃの顔を子供のように手で拭いながらぽつり、呟いた。
「……貴方が望む事なら、叶えて差し上げたいのですが」
ずず、と鼻をすすり上げながら、奴は見ているこっちが可哀想になるぐらいにしょんぼりと項垂れた。
「私は、デリックさんに……これ以上酷い事はできません」
はらはらと流れる涙は俺の頬にぽたりと滴った。人形の流す涙でもこんなに暖かいんだな、と何とも場違いな考えが浮かぶ。


全く、何て顔してやがるんだ。涙だけじゃなくて鼻水まで垂らしやがって。
長時間に渡って拘束されていたため、未だに少し痺れの残る腕を伸ばして、日々也の頭をそっと胸に抱き寄せてやる。
「……デリ、」
俺達は機械仕掛けの人形だ。けど、触れ合えばこんなにも暖かい。人とは違う形でも、気持ちだってちゃんとある。俺はきっと悔しかったんだ。誰かの代わりとしてしか彼の中に存在できない事が。ただただ、悔しくて悲しかった。
それなのに、俺は日々也にも同じ事を強いた。こいつが俺に寄せる純粋で真っ白ぐな気持ちを利用して、グチャグチャに踏みにじった。自分の中の憤りを紛らわせるめだけに。
「……ごめん、な」
けど、お前はそんな俺の為に泣いてくれるんだな。
ぎゅう、と日々也を抱く腕に力を込めて、俺はようやく、ほんの少しだけ涙を流せた気がした。







初の派生でしかも最愛の日々デリなのに薄暗・・。

鬼畜ドS日々也様も大好物ですが
個人的にはへたれ王子な日々也とデリビッチ推奨派。


(2011.8.20)


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -