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高校生





今日俺はいやらしい夢を見た。それ自体は俺にとって別におかしなことではない。初めて見たわけでもないし、健全な男子校生なら誰だって一度は見るだろう?

おかしいのはここからだ。
夢の中の相手は白いシーツに漆黒の髪を散らし少しの涙で濡れた目許を薄赤く染め口に手を当てて控えめに声を漏らし何かを堪えるように眉を寄せ時折切なげに俺の名を呼ぶ、男。
重要なことなのでもう一度言っておこう、
男。
先に断っておくが俺はホモじゃない。

更に驚くべきことに、その男は屋上、今俺の隣で煙草を吸っている同級生の土方だ。これも実におかしなことだ。おかげで俺は朝から土方の顔がまともに見れていない。


土方が新しい煙草をくわえた。
目を少し伏せながら、ライターで火を付ける。案外睫毛が長い。すっと煙を吸い込み、唇から煙草を離しゆっくりと煙を吐き出したところで細められた、瞳孔の開いた瞳と目が合った。

「…何見てんだよ」

そこで俺は漸く土方の横顔を見入っていた自分に気が付く。
先に断っておくが俺は土方が好きなわけじゃない。

「や、別に見たくて見てるわけじゃないし」
俺の目がお前から離れなくなっただけだよ。

後半部分は心の中で言い、土方は少し訝しむように眉を寄せじゃあ見てんな、と言ってまた煙草をくわえた。指が長い。俺は土方から目が離せてない。(朝から土方の顔がまともに見れていない、なんてさっきまでの事。)


この柄の悪い悪友は本当にあんな顔をするのだろうか。あんな顔とは俺の夢の中での土方の表情だが、はっきりとは覚えていない。でもすごくいやらしかったんだと思う。そのいやらしい表情とやらを頭の中で再生させようと夢の記憶を辿ってみたが、やはり漠然としていて何だか悔しくなったからまた目の前の整った横顔に意識を集中させた。横顔は無表情で煙草を吸っている。その無表情を見ながらもう一度そのような夢を見ない限り絶対あんな表情なんて見れないのか、と思ったらやっぱりまた悔しくなった。

あ、先に断っておいたが念の為もう一度。
俺は土方が好きなわけじゃない。

ただこの憎たらしいポーカーフェイスが歪むところを見てみたいというか寧ろ俺の手で歪ませてやったらさぞかし楽しいだろうなと俺の中のサディズムが顔を出しただけであってただそれが見れないことが悔しくて見れないと分かると余計見たくなるというかなんというかまぁそんな感じでありまして、

「…オイ」

土方が居心地悪そうにちらりとこちらを見やった。

「んだてめぇ…さっきから人の顔凝視しやがって。気色悪ィ」

今のこの土方の顔は若干歪んでる。
でも違う違う、俺の見たい顔はそんな可愛くない顔じゃない。
俺の見たい顔はもうちょっと色っぽく歪んだ顔なのであって決して今のこのような心底嫌そうに歪んだ顔ではないのだ。
だからさ、

「土方」
「あん?」
「俺と一発、」

「…や、なんでもない」

お前今日意味分かんねーぞ、眉間の皺を深くして土方は言った。
うん、そうかも。今のは流石に意味分かんねーこと口走りそうだったわ。
俺と一発?ヤんねーかって?莫迦ですか俺は。お前のいやらしい顔が見たいから俺と一発、だなんてもしかして俺ってばガチホモ?うわ、否定したい。でも今朝の俺のジュニアは。否定できない。俺ってば。
いや、やっぱ俺はホモじゃない。野郎のやらしい夢見て反応したのは認めよう、でもそれは土方だからだ。他の野郎の痴態なんか見たって反応するどころか悪寒さえする。だから俺はホモじゃねぇ!

あれ?
でもなんかこれじゃあ俺土方が好きみたいじゃね?

あ、あー今のなしなし。


悶々と考えてたら土方にデコピンされた。だからあんま見んじゃねーって。ちょっと赤くなって怒ってるよ。照れてるの?きゅん。








誠におかしな話です








09/6/25