TFAお題小説4. | ナノ





偽りだろうが構わないと思う程(メガププ)



*空さんより「メガ様から猛烈なアプローチを受けていくうちに段々ほだされていくププ、気づいた時にはププもメガ様の事が好きになっていて…といったある意味両片思い的なもの」との内容でリクエストを頂きました。





「我のものになれ!」と、自信満々で高らかに叫ばれた時は、一体何の冗談かと思った。
その瞬間確かに時が止まった気もする。

「………は?」

ウルトラアックスを構えたまま、敵である筈のメガトロンを見上げながらオプティマスは間の抜けた声を出す。

「…全く意味が分からないんだが」
「言葉通りよ。我は、貴様が気に入った。気になって気になって夜も眠れんからいっそのこと我のものになれオプティマス!そして耽美な快楽へレッツゴーベッドイン!!」
「本気で頭沸いてるのか腹筋大帝!?そんな理由で何でお前とベッドインなんかしなくちゃいけないんだ!…ちょっ、バカ待てスケベ笑いしながらこっち来るなぁー!?」
「ふっ、ふふふふふふ良いではないか良いではないか」

メガトロンは妙に演技がかった大仰な仕草でオプティマスに近付いて来た。距離が縮まる度になんだか得体の知れない不安に襲われて恐々と後退る。
輝くばかりの眩しい笑顔にもはや恐怖しか感じない。

「だ、だいたい何を急に馬鹿みたいなことを!メガトロンともあろう者が戦闘中にふざけているのか!?」
「ムッ?我はふざけてなどおらん。あくまでも真剣に貴様を手に入れたいと思ったまでだ」

疑うオプティマスにメガトロンはムッとして反論するが、到底信じられる話ではない。
これは恐らくメガトロンが企んだ作戦か何かだ。まだ若造のオートボットを混乱させてからかうつもりなのか。あるいは油断した所を剣でバッサリと斬り捨てるのか。
どちらにせよ、舐められたものだ。
はっとオプティマスは嘲笑う。

「それをあっさり信じる程、私も愚かではないさ」
「やはり信じないのだな。まぁ、無理も無いが…真正面に否定されるとやはり傷つくな。これが初恋は実らないと言うジレンマか。貴重なデータだ」

つれない返事に関わらず、ちっとも堪えた様子の無いメガトロンは何故か妙に納得し始めている。
それを見たオプティマスは空しいような、馬鹿馬鹿しいような脱力感でいっぱいになって、疲れたように排気した。

「…やっぱりふざけてるだけじゃないか…」
「うん?」
「私をからかうのがそんなに楽しいか?」

吐き捨てながら睨み付けると、途端にメガトロンはオロオロし始めた。

「オプティマス、怒っているのか?」
「喜んでいるように見えるのか?」
「…いや流石にそんな風に見えないが。急に怒ってどうしたのだ?そんなに嫌だったか?すまぬ。ならば毎日下駄箱ラブレター作戦で…」
「戦う気がないのなら私は帰る。お前も用が無いなら基地に引き返せばいい」

メガトロンが何か言うよりも早くオプテァマスはギゴガゴとビーグルモードにトランスフォームする。
背後で何か喚いているが、全部無視してその場を後にする。

「オプテァマァァーーース!!ラブレターが気に食わぬなら差し入れの手作りクッキーなんかどうだぁーーー!?モーニングコールもサービスしてやるぞおぉーーー!!」
「全部いるかー!!」

いっぺん頭の中身をラチェットに見てもらえ!?などと叫びながら、半ば逃げるように走り去った。





「…てな事があったんだが、ラチェットはどう思う?」
「…おいにどう思うとか聞かれてもな…」

そんなアホな出来事にどう感想を言えと?
そう呆れた顔で見下ろして来るラチェットの視線が痛くてなんともやり切れない。
診察台に寝ていたオプティマスもハハハ…と渇いた笑いしか出て来ない。
そのまま沈黙したリーダーにラチェットは排気して、テキパキと定期点検をこなしていく。しばらくして、ようやく解放されたオプティマスはゆっくりと診察台から起き上がる。

「よっしゃ、機体には何の異常も無か。部屋戻って朝まで眠っとけオプティマス」
「ああ、ありがとうラチェット。……………機体にはって?」

ふと最後の言葉が気になってオプティマスは不安になった。まさかどこかに不調でも見られたのか…
そんな完全に勘違いしているリーダーに、ラチェットは苦笑するしかない。

「…ラチェット?」
「お前さんもほとほと素直じゃないな。その証拠にさっきからエンジン音が上がっとるぞ?」
「は、え、え?わ、私が何を?素直じゃないって」
「気付いとらんなら言わせてもらうが、お前さんはメガトロンの話をする時だけちょっぴり嬉しそうな顔をしちょる」
「……………え?」
「とんでもない奴に好かれたのう、オプティマス」

心底同情してオプティマスの肩を叩くラチェット。
オプティマスはポカンとした顔で、しかしブレイン内では意味を理解しようと超高速で演算処理を繰り返していた。
何もかもがあり得なさすぎてオーバーヒート寸前である。
そんなヤバい状態のリーダーにトドメを刺したのは、突如発生した謎の現象に困惑する仲間達だった。

「ちょ…なんか郵便箱にハートマークのシール貼っラブレターが大量に詰まってるんだけど気色悪いってか恐いよオプティマァーース!?」
「ねーねーなんかさっき宅配便で手作りっぽいバカでかいサイズのクッキーも大量に届いたんだけどこれ食べていいでしょオプティマスぅー!?」
「……古ぼけた懐かしの黒電話が何故か廊下にあったでアルが……懐かし過ぎて思わず受話器取ったらメガトロンっぽい声で『パンツ何色だハァハァ』しか言わなくて即ガチャ切りしたがめっちゃキモいでアルこれオプティマスに押し付けるでアルから後はなんとかしろ…!!」
「あ、オプティマス〜?工場の見回りしてたらオプティマスの部屋の近くでメガトロンっぽいの見かけてさぁ〜。とりあえずブン殴って叩き出したけど別にいいよねぇ〜?」

愛すべき仲間達が何を言っているのか、もうオプティマスには分からなかった。

ーーードオォォンッ…

精神的に追い詰められたオプティマスのブレインはシャットダウンを実行した。





『今夜のパンツは何色だ?』
「…はいてない。人間じゃあるまいし、布製品なんか身に付けるわけないだろう」
『ううむ…ノリが悪い奴め。こういう場合は恥ずかしそうにモジモジしながら『す…透け透けの青色だ、バカッ』と言え。今夜はそれで抜く』
「本当に下ネタだらけだなお前はっ!」

あの後気絶してから部屋のベッドまで皆で運んでくれていたらしい。皆の優しさに感謝しながら、せめて心労の原因であるメガトロンに文句の一つを言おうとプロールから押し付けられた黒電話を使って通話しているが、予想した通りメガトロンは反省も謝罪も寄越さない。
それどころか嬉しそうに下ネタまで囁く始末である。
本当に腹が立つ。
この際何故黒電話なんだという疑問はスルーする。

『………』
「メガトロン?」

急に黙り込んだメガトロンに、オプティマスは訝る。

「おいどうしーーー」
『お前が好きだ』
「っーーーー!」


いつになく真剣な彼の言葉にオプティマスは絶句した。慌てて胸に手を当てれば、何故かスパークが熱く光っている……気がする。
ドクドクと鼓動が止まらない?
何で、私が?動揺しながらも、なんとか平静を取り戻そうと落ち着いたふりをする。

「っからかうつもりなら…好きだなんて言わないでくれ」
『からかうつもりは一切ないが?』
「私は、そんな簡単に好きだって言う奴は信用しない事にしているんだ」
『それは何故だ。我がメガトロンだからか?ディセプティコンだから?敵だから信じられないと?』
「もちろんそれもある!でもそれ以上に信じられないのは私がっ………!」
『貴様がどうした』
「〜〜〜〜〜信じたくない、のに、そんな風に言われたら……嫌でも意識してしまうだろうっ!?」

考えたくもない。信じたくもないはずなのに、壊れたように好きだ好きだばかり言うから自分までおかしくなるのがすごく恐い。
認めてたまるか。
メガトロンに好きだ、と言われて本当は嬉しかった…なんて。
だけど。でも。それでも。
スパークの奥底ではきっと喜んでいる自分がいる。胸が熱くて堪らない。
オプティマスは頭を抱えた。
一方、メガトロンは酷く愉快な気分で笑いを噛み殺していた。
全く、何て分かりやすく、純粋な男なのだろう。
それでこそ落としがいがある。

『…それならまだ望みがあると言うわけだな。では明日から毎日地球の中心で愛を叫んでやろう』
「それだけは止めろバカ。世間に恥を晒すぐらいなら私の前だけにしてくれ」
『ほう?それはつまり?』
「…恥知らずになるのは私とお前だけ…になるからな。その方が気楽でいい」
『ならば今からっ』
「明日から、だ!今日はもう終わり!」
『えーっ』
「明日から!」

でないときっと眠れなくなるから嫌だ。
…なんて絶対に言えない。
メガトロンは受話器の向こうでまだ喚いているが、オプティマスは排気して静かに受話器を置いた。

(終)

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