TF 100題 | ナノ





0048:あれ?愛されてる?(メガププ)



自分は愛されている。

と、はっきり自覚するようになったのは実はここ最近だ。どうも私はそういった好意には疎い上にネガティブな思考の持ち主な(何せ今まで恋愛にはとんと縁が無かった)せいで、今の今まで彼から向けられていた好意に全く気づかなかったのだ。
正直、相手にはすまなかったと思っている。
とは言え元々は天と地ほどの差がある立場な上に、敵同士だったのだから分からなくとも仕方がない。分かるはずが無かった。まさか奴が。我々の宿敵。ディセプティコンの首領たるメガトロンがちっぽけな自分に目を向けるなどとは。
そう思うのだが彼と周りは何故か私に哀れむような視線を向けてくる。

「や、だってそれは流石にね。あんなあからさまな告白を毎回毎回叫んでいたのに全く気づかないって言うププの鈍感さが逆にピュアでぷりていと言うか。うん。やっぱ可愛いよ。最高」
「お前は何を言ってるんだ…」

呆れたような顔をしてオプティマスはタッチパネルを叩く指を止めてバンブルビーへ
振り返る。彼は何が可笑しいのか、小柄で愛嬌のある顔をにんまりとして笑いを堪えていた。
こういった時の彼はロクでもない事を企んでいるに違いない。経験で知っている。
見た目に反して恋愛沙汰には精通していると豪語する彼にはどうせ何を反論しようが通じないに決まっているから、無駄な反論はしない方がいい。
仕事だってまだ残っている。

「あ、でもさー。その仕事だって本当は昨日提出だったのに朝帰りしちゃったもんだから遅れちゃったんだよねー?昨晩はさぞかし激しかっ…いってぇ!?」
「いい加減にしろ!お前こそ馬鹿なこと言ってないで溜まっている報告書を上げたらどうなんだ?まだ私に未提出だったぞ!」

真っ赤な顔をしたオプティマスに拳骨を喰らったバンブルビーは悲鳴を上げて床を転げ回った。
すこし胸が痛んだが、しかしこれもセクハラには違いないと上司たるオプティマスは部下から視線をモニターに戻す。
ふと時刻を確認した。今現在は地球に赴任しているために昼の12時ちょうどである。遠く離れたサイバトロン星は自転も公転周期も地球と異なるために時刻が重なることはないが、恐らく今頃メガトロンは和平交渉の為にウルトラマグナスと面会をしているはずだ。
終戦。そのきっかけはアッサリとしていてあまりにも予想外な結末で。一介の部隊長たるオプティマスは今だに実感が湧かなかった。ただ分かるのは好きになった相手がメガトロンと言うだけでオプティマスに政治的な思惑など何もなかった。本当だ。マスコミには随分と好き勝手に書かれたもののそれが事実だ。
つぎはいつ会えるだろうか?実のところ彼はその立場上、多忙過ぎるためにしばらくは会えそうもなかった。昨晩はあんなに激しく求め合ったのに、朝が来るのがとてももどかしかった。
はぁ。やるせなさを吐き出すように排気した。
自分は確かに彼に愛されている。それはとっくに分かっているのにこの気持ちは何なんだろう。寂しい気持ちもあるし会いたい気持ちもあるが、こんな自分が逆に鬱陶しく思ってしまう奇妙な矛盾感に苛まれている。

(私は恋しいのかな…)

こんな気持ちは自分だけだろうか?
そこまで考えた瞬間、なんだか猛烈に恥ずかしくなってきた。いい年をして初心な乙女か。いや確かに恋愛など今回が初めてだが。いやだからこそ年下の部下やサリにからかわれるのか?
こんな事ならアカデミー時代、悪友たるセンチネルに誘われていた合コンを断らずに一回は行けばよかったかも知れない。未知の経験にどうしていいのかよく分からないから、メガトロンの望むままに身も心も曝け出して彼に全てを預けていた。
彼もその事に関して不満は言ってこなかったから甘えているのだ。むしろ嬉しそうな顔をして逞しい腕で抱擁し、互いに熱を貪り、そして…
…ああダメだな
すっかり奴に縛られている。悪い気はしないけれど。
そんな頬を赤くしながら顔に手を当ててちまちまパネルを叩いている上司をバンブルビーは呆れた顔で見上げていた。誰がどう見ても相思相愛で見ているこちらの方が恥ずかしなって来るのを果たして彼は知っているのだろうか?
ついでにこの仕事場や自室にも盗聴器や盗撮用のレンズが光っているという事実もたぶん全く気づいていないと確信する。あの憎たらしい紫の腹心は決して手を抜かない。仕事は完璧だ。犯罪だし変態だけど。もう言ってやる。メガトロンは変態の覗き魔だ。奴の愛が怖すぎる。

(…でも言えない。ごめんよオプティマス…!)

こんな面白い…いやいやいや堅物上司にやっと訪れた春を温かく見守ってあげたいバンブルビーは、心の中で気持ちのこもっていない謝罪をした。

(終)

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