TFA短編 | ナノ

不思議なハロウィンの夜(Rinさんリク:ATドタバタギャグ)

毎年、オプティマスチームがハロウィンパーティーを開催するのはもはや恒例行事となっているが、今年のハロウィンは例年よりももっと面白いものにしようよ!と、バンブルビーとサリのコンビが高らかに立案したことがそもそもの騒動のキッカケであった。
2人の主張はこうである。
ハロウィンと言えば仮装は外せない。しかし毎年毎年似たような仮装をするのはマンネリだから、メンバーがそれぞれやりたい仮装を紙に書いて四つ折りにして箱に入れ、中身を混ぜてから1人ずつ再び紙を一枚ずつ取る。
そしてその紙に書かれている仮装を取った人物が仮装する、というクジ引きのような趣向をやろうと言うものである。

「ね、オプティマス、面白そうでしょ?」
「毎年似たような仮装でマンネリだからさぁー。たまにはワクワクドキドキするようなイベントも必要だって!慰労会みたいなものだからって本部からも経費落ちるんでしょ?」
「うーん…まああのセンチネルがよくも地球人のイベントに予算を回してくれりなぁと毎年不思議に思うんだが…」
「センチネルもやっと地球の文化に理解を示し始めたんでしょ?いい事じゃない!」
「それもそうだな」

やっとセンチネルの有機生命体嫌いが軟化し始めたのか…と嬉しく思うオプティマスの笑顔を見上げるサリとバンブルビーは、センチネルの本心を知っているためにほんの少し罪悪感が胸をよぎる。
だが、今回の作戦は何としても成功させなければならない。
上手くいけば倍以上の経費と臨時ボーナスがセンチネルから貰える約束なのだ。
オプティマスには気の毒だが。

「分かった。確かに面白そうだし許可しよう。さっそく全員を呼んで始めるか」
「「わーい!やったー!!」」

手を取り合って喜ぶサリとバンブルビーを見たオプティマスは、そんなに嬉しいのか、よかったよかったと嬉しくなる。
しかしこの後、自分がどんな仮装をやる羽目になるのか想像もしていなかった。


全員でクジ引き中。


結果。

バンブルビー…魔法使い。
サリ…狼男
バルクヘッド…魔女
ラチェット…吸血鬼
プロール…ゾンビ
オプティマス…セクシーインキュバス


『……………』

紙を拡げて固まったオプティマスに注がれる憐れみの視線が虚しい。
しかしただ1人だけ内心ほくそ笑む悪魔がいたことを誰も知らない。

「お、オプティマス…それ本気でやっとか?」
「誰がこんなもん紙に書いたである?」
「いいじゃん別に!ねぇオプティマス、プライムに二言は無いよね〜?」
「私、セクシーなオプティマスも見てみたいなぁ〜」
「え、本気なのサリ!?オプティマスは男だよ!」
「もーバルクヘッドは分かってないわね!だからいいんじゃない!」
「ボクには分からない境地だよぉ…バンブルビー、やけにニヤニヤしているけどどうしたの?」
「い、いや別に何でも!」
(お前の仕業か…)

プロールとラチェットに睨まれるバンブルビーは遠くを見ながら口笛を吹いて誤魔化そうとする。
またしょうもない悪戯を!本気で説教をかまそうとしたラチェットは、それまで黙り込んでいたオプティマスがふと覚悟を決めた顔をしていることに気付いて動きが止まった。

「…オプティマスまさか…」
「や、やるのであるか!?インキュバスであるぞ!?」
「………引き当てた以上、プライムに二言は無いさ」
「やったー!」

驚愕する一同。
歓喜するバンブルビーの脳天に拳骨が降る音がやたら気持ちよく基地の中に響いた。


と、こんな事がハロウィン前日にあった出来事である。
そしてハロウィンパーティー当日の夜、泣く泣くセクシーなインキュバスの仮装をしたオプティマスは興奮しまくりの魔法使いの仮装をしたバンブルビーにまとわり付かれ、やたらと過剰なボディタッチをされた。
主に尻周りを。

「うわーやっぱりオプティマスよく似合うよ!やっぱり細い腰周りのパンツみたいなパーツ外して正解だったね!ハイレグがまた際どく股間に食い込んでさらにエロさ倍増…いっだい!?」

ペタペタといやらしい仕草で尻に這い回る手を払ったインキュバスオプティマスは、顔を真っ赤にしながら脳天に拳骨を振り下ろした。

「やかましい!誰のせいだ誰の!?」
「イタタタ…で、でも本気でそう思ったのに…あ、写真撮っていい?」
「はぁ…もう好きにしてくれ。どうせ裏でセンチネルが企んでいたんだろ?」
「あ、バレてた?」
「…あいつと何年友人だったと思ってるんだ。こんな馬鹿馬鹿しいことはあいつ以外考えられないだろ。とにかく適当に撮って経費ふんだくってくれ」

諦めの境地に達したのか、どこか遠くの空を眺めるかのような顔をしてソファーに座り込む。
実はウルトラマグナスも一枚噛んでいるのよね…などと思っている狼男サリだったがもちろん口に出さずオレンジジュースを味わっていた。

「でもよく似合っているわよ。頭の角と背中の小さなコウモリの羽根とか、あとお尻の悪魔の尻尾もすっごく可愛い!」
「ハハハ…ありがとうサリ。ああそうだ。すっかり忘れていたけどTrick or Treat?」
「あら、今年は反対なのね。え〜とお菓子は…あ、あったあった!じゃあこのエネルゴンマシュマロをあげるーーー」
「ウォォォオプティマァァァス!!ハッピーなハロウィンだなぁぁぁ!?」

突然、入り口のシャッターをぶち破って乱入して来たディセプティコンの面々にオプティマス達は面喰らう。

「うげ!やっぱり来た!」
「め、メガトロン!?何故ここに!」
「もちろん貴様とハロウィンを楽しむためよ!ほれ仮装も菓子もこの通り。毎年恒例行事だろう!」
「だからって毎年毎年入り口を破壊するな!修理費用捻るの大変なんだぞ!」
「そんな金ぐらい我が出してやるわ!水臭いことを言うなオプティマスよ……いや、今年はやたらセクシーな仮装だな。ひょっとして実はそーゆー趣味が」
「真面目そうな奴ほど隠れた性癖があるって言いますもんねぇ〜」

助平笑いを浮かべながらオプティマスの全身を舐めまわすように見る包帯男メガトロンと悪魔スタースクリーム。
…と、その背後で白雪姫の継母ブラックアラクニアが、赤い毒リンゴを弄りながら呆れた顔をしている。

「断じて違う!ーーあ、ちょ、エリータこれは違うんだぁー!色々事情があって…だから頼むそんな目で見ないでくれ…!」
「そんな裸にひん剥かれた女みたいに胸を隠さなくていーわよ。どうせ変態顎野郎が一枚噛んでいるんでしょ?あいつ、大学時代からアンタにどぎついセクハラかましてたものね〜。同情するッシャオプティマス」

苦笑するブラックアラクニア。

「ううう…」

情けなさに涙目になるオプティマス。
ぐうの音も出ない。
さらにはブリッツウィングやラグナッツに冷やかされ、仕舞いには何故か情報長官ロングアームの姿を晒していたショックウェーブに労わるように肩に手を置かれてしまった。

「貴方もあの変態野郎のせいで苦労していますね…私も心から同情しますよ」
「ショッ……ええとロングアーム、君もその、やっぱりあいつに苦労しているのかい?」
「それはもう。時々あの顎を削りたくなりますよ」
「そ、そうか…」

ニッコリと爽やかな笑顔のままで言い放つ彼に寒気を感じた。
そんなロングアームにバンブルビーが嬉しそうに駆け寄った。

「あ、ロングアーム久しぶりー!Trick or Treat!」
「ははは、久しぶりですねバンブルビー。もちろんお菓子は持って来ていますよ。エネルゴンパンプキンパイですが、今食べますか?」
「食べる食べるー!ねぇサリも行こう!」
「う〜ん、私はエネルゴンは食べられないんだけど…」
「もちろん人間様のお菓子もたくさん用意していますよ?」
「さっすがお気遣いの紳士ね!」

キャッキャと楽しそうなバンブルビー達はお菓子を食べるためにキッチンへと移動し始めた。

「ラグナッツ、私達もキッチンへ行きますか?」
「でもメガトロン様をお一人には出来ないっつ!」
「何言ってるんですか。これからメガトロン様お楽しみのスーパーセクハラタイムが始まるんですから邪魔をしちゃいけませんよ。ほれスタースクリームやブラックアラクニアも写真ばっか取らないでキッチンに行きましょう」
「あ、おい!無理に翼を引っ掴むな!」
「ちょっと!まだたくさん写真とって他の連中に高値で売り付けてやるのに邪魔しないでッシャ!」
「エリータ……君は何の商売をやる気なんだ…」

愕然としながら引きずられて部屋を去るディセプティコン達を見送るオプティマスだったが、ふと部屋には自分とメガトロン以外誰もいないことに気が付いた。

「え、あれ…?他のみんなは?」
「他の連中ならとうに出て行ったぞ?貴様、今まで気付かなかったのか」
「そ、そんな…」
「ククク…これでやっと貴様と二人きりになれたなぁ?オプティマス、もっとこっちに来い」

ニヤニヤと笑うメガトロンに強引に抱き寄せられ、膝の上に座らされたオプティマスはなんとか逃れようともがくがやはりと言うか、所詮は虚しい抵抗であった。

「毎年毎年諦めの悪い奴よ。今年はインキュバスか…まさしく男を誘惑する淫魔だな。貴様のここは、ひょっとして薄い布を引き裂いたらレセプタが丸見えではないか…?」

メガトロンは薄笑いしつつハイレグの隙間に指先を差し入れて引っ張ろうとする。

「ひ…!止め、そこを破らないでくれ………ふ、んっ…!?」

不意打ちのように奪われた唇。
メガトロンの赤いオプティックが期待を込めてオプティマスを見据えた。

「Trick or Treat?……さぁ選べ」
「お、お菓子を……って無い!?何で!さっきまであったのに!」
「なら悪戯決定だな?」
「またバンブルビーの奴…!こ、今年もこんなパターンなのか…!?あ、あ、やめっ、やぁっ……」
「ふ、これでいいのだ」
「納得いかなっ………アッーーー」

悲鳴はやがて艶めいた喘ぎに変わってゆく。
結局、淫魔は包帯男に美味しく食べられてしまい。
翌朝、バンブルビーはタンコブが出来て悶絶したものの、エリートガード宛に送ったインキュバス仮装をしたオプティマスの写真効果のためか来年の予算と臨時ボーナスは破格の額であったという。


(終)


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