TFA短編 | ナノ

ツイリクChiyamaさんへ ロクオプ

その存在にどれだけの価値があるのかたぶん目の前の若いプライムは全然理解していないに違いない。
何故にこのプライムはこうも自身を卑下するのだろう。常に裏社会を生き抜いて来たロックダウンには理解出来なかった。実力はあるのにそれを素直に認めることが出来ないなんて、ある種のバグではないかー
そう言ってやると、オプティマスプライムは悲しそうに笑う。

「私もたぶん、そう思う。私はきっとどこか故障しているのかもしれない…」
「おいおい、仮にも俺を倒した奴が卑屈だな。アンタはもっと自信を持っていいんじゃねぇのか?」
「あの時は頼りになる仲間達がいたからだ。でも私一人ではきっと…守ることが難しい」

表情が曇る。俯いた顔を両手で覆ったオプティマスを、ロックダウンは無言で見下ろしていた。

「…なぁ。今のアンタは本当にあのオプティマスプライムなのか?」
「本物のオプティマスプライムさ。だけどロックダウン、君は偽物なんだろう?だってこれは私の夢なんだから」
「はぁ?いや夢じゃねーし。ただ夜這いに来ただけだっつーの」
「ハハハ…夢のお前は面白いなぁ。私は男だよ?忍び込む部屋を間違えてる」
「うるせぇこの酒浸りプライム。だいたい何本オイル缶空けたんだよ、床が缶だらけじゃねーか。おい、何かあったのか?」
「…君には関係無い」
「確かにねぇが、そんな鬱っぽかったら襲う気になれねーんだよ」

あーあ…ロックダウンは呆れた顔で頭を掻く。今夜は決めてやると決意してせっかく夜這いしに来たのに、当のターゲットがこれではムードもへったくれも無い。つまらない。
ロックダウンは鬱々と落ち込み続けるオプティマスの隣にどかりと座った。
そっと顔を覗き込む。とりあえず今は泣いていないようでホッとした。
しかしいい加減元の状態に戻って欲しいものだ。出なければ、抱く気になれない。
…本当に世話が焼ける。

「なぁ、俺が慰めてやろうか?」

ニヤリと笑うロックダウンがオプティマスを抱き寄せて囁いた。
オプティマスはキョトンとした顔で見上げる。

「慰めてくれるのか?」
「もちろん。ただし大人の慰め方の方だがな」
「……君のブレインはそれしか無いのかい?」
「これが俺だ。文句あるのか?」
「いいや、…君らしいよ。なんだか少し悪友に似ている」

クスクス笑うオプティマスを、ロックダウンは訝しげに見下ろした。

「あぁ?誰だ、悪友ってのは?どこが似てやがる?」
「うーん……そのしゃくれた顎、かな?」
「………」
「だって、本当に似ているんだから仕方ない。ハハハ…」

そう言って笑うオプティマスを睨み付けようとしたが、止めた。せっかく笑ったのにまた落ち込ませることもあるまい。

「笑うな。機嫌が治ったんなら俺の相手をしやがれ」

ロックダウンはオプティマスの頬を鉤爪で撫で下ろす。
笑うのを止めたオプティマスが、あっと今さら気が付いたように声を上げた。

「やっぱり夢じゃなかったのか…?参ったな、まさか本者だったなんて…」
「気付くのがおせーよ!て言うか、一体何でそんなに落ち込んでやがった?」
「ああ、実はこの工場にゴキブリが出るからバルサンを焚いて駆除しようと頑張ったんだけど駆除し切れなかったらしくて、今朝ラチェットの部屋に奴らが三匹も出たんだ…。そのせいで驚いたラチェットが転んでぎっくり腰になってしまって…ゴキブリも駆除出来ないなんて私はプライム失格だ…!」
「どんな深刻な悩みかと思えばくっっだらねぇ内容だなオイ!?…あーもー、いいから抱かせろ!黙って横になれ!」
「わっ、ロックダウン…?」

やや乱暴に押し倒されたオプティマスは驚いてロックダウンを見上げた。

「やっぱりするのか…?」
「当たり前だ。タダで帰れるかっ」
「はぁ」
「今夜は優しくしてやるよ」

そんな陳腐な悩みより俺の事で頭がいっぱいになればいい。快楽に歪む顔を想像しながら無防備なその体に手を伸ばした。

(終)


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