TFA短編 | ナノ

道端で拾ったワンコ(ブラーとオプティマス部隊)

遥かな銀河の片隅にある地球と呼ばれる星にブラーは特務調査員として派遣された。
エリートガードに入隊してから初めてロングアーム情報長官自らが自分に与えらた任務である。最初は舞い上がって喜んだものだった。なにせ、ブラーはアカデミー時代から主席トップで卒業したロングアームをずっと尊敬していた。その優秀な頭脳で若輩ながら異例の若さで長官(プライム)に出世した彼の部下にいつかなれたらと願っていた矢先の任務に不満なぞあるはずもない。
任された以上、必ずやり遂げてみせる。そして成果を掴んで胸を貼って故郷の星に帰り、ロングアーム長官に褒めてもらおう。
うんうんとそこまで回想しながらブラーは満足げに一人頷く。そして両手いっぱいに持つ特製エネルゴンまんぢう(オプティマスお手製)をガツガツと口に詰め込んでは貪り喰っていた。よほど飢えていたのかその表情はどこか危機迫っていたし、装甲は所々薄汚れている。
ただひたすらまんぢうを貪っているブラーを、バンブルビーやアイアンハイドは呆れた顔で見守っていた。

「…よく食べるねー。そんなにお腹すいてたの?」
「そふひゃんにゃだよはぐはぐはぐっ」
「いや無理に喋らなくていーから!ちゃんと飲み込まないと喉つまるよ!?」
「んぐんぐ…ぷはぁー!あーこのオイルもまんぢう?もとってもとってもとっても美味しい美味しい美味しい!これ作ったのオプティマス?すごくすごくすごく器用だね!」
「でしょでしょ〜?オイラも大好物なんだぁ」
「それにしてもさぁ、何でそんなボロボロで倒れていたわけ?プロールが見つけて来なかったらガス欠寸前でヤバかったってラチェットが言ってたよ」
「う……いやぁそれはぁ……あのあのあのえっと……」

うっと言いにくそうに口ごもるブラー。
まさか、本当にお腹が空いて行き倒れていたなんて言えない。仮にも自分、エリートガードなのに潜入先の星で、監視対象である部隊に助けられるとは。情けない…
そう落ち込んでいた時、部屋にオプティマスとサリが入って来た。サリは起きたブラーを見て嬉しそうに駆けて来る。

「あ、良かった!あなた元気になったのね!初めまして、私はサリ!よろしくね」
「わ、わ、人間の女の子?アタシはアタシはエリートガードのブラー!よろしくよろしくよろしくね!」

ほんわかな雰囲気で馴れ合い始めた二人をなんだか気に食わない様子で眺めるバンブルビーとアイアンハイドを後ろから見つめていたオプティマスは思わず苦笑した。
サリと話していたブラーはようやくオプティマスに気付くと慌てて立ち上がる。

「オプティマス・プライム!あのあのどうもありがとうございます!おかげで助かりました!アタシはアタシはアタシはエリートガード特務調査員ブラーです!」
「礼ならプロールに言ってくれ。彼は今ラチェットと一緒に出掛けているから此処にいないけどね。ま、元気そうで安心したよ。ところでブラーは何故この星に?エリートガードの者が派遣されたとは聞いていないが…もしやディセプティコンの偵察を?」
「はい、もちろんもちろんその任務もありますが、アタシは今、オプティマス部隊の日常と動向を監視または報告せよと重要な任務を命令されていまして」
「「「「………は?」」」」

さらりと笑顔で重要らしい任務をペラペラ喋り出す目の前の特務調査員に、全員目が点になる。

「私達の日常を監視しろだって?誰がそんな命令を?」
「センチネル・プライムとロングアーム長官です!」
「へ?ロングアームが?何で?」
「ちょっとちょっとちょっとバンブルビー!仮にも長官を呼び捨てにしないでしないでしないでよ!?アタシだってまだ呼び捨てにしたことないのに!!」
「呼び捨てしたいんかい!?いやだって僕とロングアームはアカデミーの同期だもん!アイアンハイドもだけどね!」
「あー懐かしいね〜アカデミーの訓練生時代。ロングアームはすごい優等生でぇ〜バンブルビーはいつもビリから二番でぇ〜」
「ちょ…!僕はビリじゃないよ!いっぱい頑張ったんだからね!?」
「いいないいないいなねぇねぇロングアーム長官のアカデミー時代の話とかいろいろ聞かせて聞かせて聞かせて!」
「いいよ〜。あれはバンブルビーが赤点取った時………」
「やぁあめてえぇええーーーー!!」

昔の恥を語り出したアイアンハイドに涙目のバンブルビーが喚きながらしがみつく。ブラーは目を輝かせながら話を聞いていた。

一方、サリはさっきからオプティマスがやけに静かな事に気付いて下から見上げると、彼は微かに青褪めた顔で(元々顔青いけど)ふるふると震えていた。
たぶん、怒りやら羞恥やらでごちゃ混ぜになっているんだろうなぁとサリは気の毒に思った。つい先日エリートガードの船が本星に帰還してからも毎日毎日オプティマス名指しで通信を寄越すお暇なセンチネルは、いつも下ネタパワハラセクハラ全開で生真面目なオプティマスを困らせているのだ。
いつかブチ切れたオプティマスにフルボッコにされるんじゃないだろうか。
いや、むしろそうなってしまえ。
サリは心からそう願った。

(終)


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