TFA短編 | ナノ

暗闇の中に沈めて(アラクニア×ププ♀)

*ちょっと特殊な設定です。
・ププが最初から♀化
・アラクニアと百合な関係





なんとなく、敵から求愛をされる女兵士の恋物語って燃えるわよね、と以前サリがうっとりと語っていたのをオプティマスは思い出した。
最初に聞いた時は一体それのどこが燃えるのか。そもそも敵同士なのになぜわざわざ求愛など?
意味が理解出来なくて彼女に尋ねたら、サリはもう!オプティマスったら乙女心が全然分かっていないのね!などと叱られてしまったのだ。
だから、乙女心とは何なんだと彼女に聞いてみたらパアッとサリの表情が輝いた。

「乙女心って言うのはね、恋をしたくなるって気持ちなのよ!気になる人から愛されたいって気持ちと、ちょっと不安になる気持ちが葛藤しているって感じかしら?」
「へぇ…乙女心とはそんなものなのか?それなら今の私に………」
「へ?オプティマスに?」
「ーーーあ、いや、何でもない」

キョトンとするサリを見下ろして、しまった失言だったとオプティマスは慌てた。
だが、そんな珍しいオプティマスの動揺を多感なサリが見逃すはずもなかった。

「え?ひょっとしてオプティマスも誰かに恋してるの!?ねぇねぇ誰!?教えてよー!」
「ちち違う違う違う!そんな相手はいない!」
「えー嘘つき!じゃあ何でそんな顔真っ赤になってるの?やっぱりいるんじゃん好きな人!」
「サリ…勘弁してくれ…」

恋話に喰いついて来るサリの勢いがちょっと怖い。
オプティマスはハァ…と排気する。
わーわーと喚くサリに苦笑しながら、ふとオプティマスのブレインに浮かび上がる一機のトランスフォーマーがいた。
彼女は、かつて共に学んだ友人だった。
美しく聡明で、誰からも愛されていた彼女。オプティマスも昔から憧れていた姉のような存在。
しかし今は絶望に染まったスパークを表すかのような漆黒のボディに成り果ててしまった。

(…私のせいで…)

あの事件を思い出す度にズキンズキンとスパークが痛む。

(エリータワン。エリー………)

償えるならば償いたい。
憎悪を浮かべた顔で自分を殺そうとするエリータワン…彼女は今はブラックアラクニアと名を変えていた。





待ち合わせは真夜中の森の中だった。指定された場所に辿り着き、ロボットモードにトランスフォームした瞬間に何処からか放たれた蜘蛛の糸にあっという間に四肢を捕らわれてしまった。
驚いたオプティマスは逃れようと必死で抵抗するが、もがけばもがくほど糸が体に巻き付いて来る。
完全に拘束されてしまったオプティマスへ、音も無く現れたブラックアラクニアが近付いて来た。
目の前に来た彼女は、膝を曲げてオプティマスの顎を掴んで強引に上向かせる。

「…よく私の前にのこのこと一人で現れたわね。オプティマスプライム」
「エリー、君が私を呼んだんだろう?私は約束通り来た。君と話し合うために」
「そんな状態で私と何を話し合おうって言うの?笑わせないで!」

嘲笑するブラックアラクニアにオプティマスは唇を噛んで俯いた。
が、顎を掴んだままのブラックアラクニアにまた強引に上向かせられる。
もはや吐息が頬に触れ合う程、至近距離で互いに見つめあっていた。
オプティマスはブラックアラクニアの四つの隻眼を見た。真っ赤なカメラアイの色は、確かに憎しみに染まっているけれど、その奥はもっと悲しみが潜んでいるように思えた。
ふっ…とブラックアラクニアが自嘲気味に笑う。

「何よ、その顔は?私の醜い顔がそんなに珍しいの?なんならもっとじっくり見てもいいわよ。明日の朝日はもう見れないのだからねぇ」
「エリーは私を許せない…のか?」
「…当たり前っシャ!私がどれだけアンタを憎んでいると思っているの…?アンタのせいで私は何もかも失った…この罪をどう償うって言うのよ?正直、殺すだけじゃ物足りないわ。私以上にもっともっと苦しめばいい…!生きていたくないくらいにね!!」

殺気立って吐き捨てるブラックアラクニアが逆に痛々しく映った。

「エリー、私はずっと君に会いたかった。殺して君の気が済むならそうしてほしい。だけど、もしもまだ元の体に戻りたい気持ちがあるなら…いや、たとえ戻れなくても、昔みたいにずっと一緒にいよう。君にどう償えばいいのか私に教えてくれ」

オプティマスは必死で彼女に訴える。
死ぬのならせめてこの気持ちだけは伝えたかった。

(…昔みたいに?)

ブラックアラクニアは絶句した。
呆れたのだ。この女は、まだ私を優しかったエリータワンだと思いたいのか。
ああ、でも確かに昔はまだ未熟なオプティマスを妹のように可愛がってあげたものだ。センチネルと三人で騒ぎ合った懐かしくも遠い日々。
その思い出は、変わり果てた姿になっても時々鮮やかに思い出す時があるのだ。
幸せだったあの日々を。
エリータワンは妹のようなオプティマスが好きだった。
それはたぶん今も。
だからこそこんなに苦しいのに!

(なのに、なのにどうして私はオプティマスを殺せないの!?)

殺せばいい。
こんなに苦しい想いを抱えるぐらいなら、いっそ楽になりたい。そうすれば少しは救われるだろうに。いつだってエリータワンの記憶が邪魔をする。
オプティマスを殺さないでと泣いている。
畜生、畜生、畜生!

「…エリー?どうしたんだ?」
「………もういい。今夜だけは見逃してあげるわ、オプティマス。だけどその前に、償うって言ったわよね…?だったら頂戴」

しなやかな漆黒のボディをくねらせつつ官能的に囁かれ、オプティマスはゾワッと機体が震えた。
何をっ、と聞く前に唇を塞がれて今度はオプティマスが絶句した。

「…アンタの純潔を私に捧げなさい…」

硬直したままオプティマスは動けない。
ペロリと捕食者のような長い舌で唇を舐めながらブラックアラクニアは酷く魅惑的な笑みを浮かべた。

(終)


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