TFAお題小説2 | ナノ





パフォーマンスキス(メガププ)



「メガトロン…メガトロン?」

何度も名前を呼ぶ声にふっとメガトロンは意識が浮上した。
少し顔を傾けると眠りから覚めたオプティマスが心配そうに顔を覗き込んでいた。

「なんだかうなされていたけど大丈夫かい?」
「ああ…心配いらん。ただの、夢だ」

だから心配いらないと、安心させるようにオプティマスの頬を撫でた後に上半身を起こした。
ホッとするオプティマスだったが、しかしどことなくその表情には陰があるような気がした。
胡座をかいたメガトロンは気怠げに一つ排気した。そして顔も向けずにおもむろに右手をオプティマスの方へ伸ばす。
ちょうど胸元に止まった右手は何かを訴えるかのように上下に揺れている。
その意味を知っているオプティマスはやれやれと嘆息しながらあるものの準備の為一旦ベッドから降りた。
そのまま部屋を後にする。
しばらくして両手に銀色のお盆を持ったオプティマスが戻って来た。そのお盆の上には最高級のエネルゴンボトルとクリスタルグラスが一つ。
つまり酒だ。

「ほら、持って来たぞ」
「グラスを寄越せ」
「はいはい」
「酌をしろ」
「…はいはい」

視線も合わさず一言の礼も無く、口から放たれた言葉はそれである。
オプティマス相手でも王者の威風は相変わらずなのか。礼を期待したわけではないが、正直カチンと来ないわけでもない。
だが、今みたいに無言で視線を合わさない時は大概不機嫌なのだと経験から知っていた。
無用な波風を立てることもあるまいと、言われた通りにグラスにエネルゴンを注ぐと、メガトロンは一気に仰いだ。
そしてすぐにグラスを突き返して来た。
今度は赫のオプティックが真っ直ぐに此方を見ている。

(もっと注げと言うことか…はー)

なんだかまるでキャバクラみたいだなぁと思いながら二杯目を注いでやると、またすぐに飲み干した。
その後も甲斐甲斐しくお酌をしていたオプティマスだったが、19杯目に突入した頃からさすがにメガトロンが心配になって来た。

「飲み過ぎだぞメガトロン。そろそろ止めないか?」
「うるさい…いいから次を注げ」
「もう顔が真っ赤じゃないか。これ以上は機体に悪いから駄目だ。だいたい次ったってもう一杯分しかないぞ?」
「むう…」

メガトロンは不満げに唸る。オプティマスは呆れながらグラスを片付けようとするが、突然メガトロンに腕を掴まれた。
呆気に取られるオプティマスからボトルをかっさらうと蓋を空けて飲み干そうとする。
慌てたオプティマスは取り返そうとメガトロンに飛び付いた。

「何をする!酒が零れるだろうが!」
「これ以上は駄目だとさっき言っただろう!?駄目なものは駄目だ!これは没収する!」
「断る!!」

いい大人のはずのトランスフォーマー二機が必死の形相で小さなボトルを奪い合う様を、他の誰かが見ればどう思うだろうか。
そんなことすら思い至らない程オプティマスとメガトロンはベッドの上でどっすんばったん暴れ回る。
こうと決めたら頑固なオプティマスの抵抗は強かった。苛立つメガトロンだが、ふと悪戯心がブレイン内に湧く。
オプティマスがボトルに力を込めて引き寄せた瞬間、メガトロンは少しだけ指の力を緩めてやった。
急に離され、力いっぱい引き寄せたオプティマスは後ろに倒れそうになる。
うわぁと驚く彼は思わずボトルから手を離してしまった。

ーーービシャア!

その結果、顔面にエネルゴンがぶちまけられてしまった。

「………」

オプティマスは茫然とメガトロンを見上げた。
メガトロンはニヤニヤ笑いながらボタボタとエネルゴンが滴り落ちる顔に触れる。

「エネルゴンも滴るいい男だな」
「お、お前が急に手を離すからこんな目に…!こ、こらっ顔を舐めるなぁ酔っぱらい!」
「綺麗に舐め取ってやるから暴れるな」

ジタバタ抵抗する機体を難なく抱き込んで両頬を手で挟みながら無遠慮に舌を這わせた。
顔中を這い回る生温かい感触にオプティマスは一瞬ビクッと震えた。丁寧な舌使いにどうしてか抵抗する気も次第に消えてしまい、大人しくされるがままになっている。
それに気を良くしたメガトロンは目元から唇を下ろして小さな可愛い唇を舐めた。

「ひゃあっ」

いきなり唇を舐められて思わず変な声が出てしまった。
そんな反応をもっと見たいメガトロンは、オプティマスの顎を掴んで強引に唇を重ねる。

「んっ……ん…!」

口付けはエネルゴンの味がした。
角度を変えて思うがままに蹂躙され、熱い舌とエネルゴンにオプティマスのブレインがぐらぐらする。
メガトロンが離した頃には腕の中でぐったりと排気を繰り返していた。

「はぁ……」
「生きているか?」
「め、がとろん〜〜!」
「…そんな涙目で見上げられるともっと虐めたくなるわ。せっかくだ、最後までやるか?」
「なっ…ちょ!さっきやったばかりなのにまた!?」
「もちろん無理強いはしないが?」
「うっ…」

メガトロンは肩から腰までゆっくり撫でた後、ゴロンと仰向けになる。
そのまま何も言わずに笑いながらオプティマスを見上げていた。
いや、たぶん待っているのだ。
顔の温度が羞恥心でだんだん上がっていく。ブレイン内は、いつまでも意地をはらずにさっさとメガトロンの胸元へ飛び込めばいいと訴えていたが、それを実行するのに時間が掛かるのがオプティマスという男なのだ。
あうあうと焦れったい純朴過ぎる若者。
そんなオプティマスを熟練した精神の持ち主たるメガトロンだからこそ余裕で待つことが出来た。
やがて湧き上がる欲望に素直になったらしいオプティマスは腰を上げてメガトロンに近寄った。

「まずは馬乗りになれ。次は…そうだな、我をその気にさせるようなキスをしろ。顔でも胸でも、何ならコネクタでも大いに構わんぞ?」
「ば、バカッ!」

しょうもないリクエストを強請るエロ親父を拳一発で黙らせる。
けれど、その後の行為を期待しているのも事実で…

「飲んでないのに私も酔ったみたいだ…」

と、赤い顔のままオプティマスは排気混じりに呟いた。

(終)

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