TFA可愛い雌犬の躾け方 | ナノ





可愛い犬の躾け方 5日目(メガププ)



熱く愛しあった後の穏やかな時間が酷く幸せだった。


睦み事の余韻も冷め止まぬ互いの体を労わるように寄り添う。少し乱れたベッドの上で機体の半分もあろうかという大きなクッションを背もたれにしたメガトロンは優しくオプティマスを抱き寄せていた。
オプティマスもオプティックの光を閉じて大きな胸元に寄り添っている。逞しい体だなぁと出会った時から思っていた。自分達オートボットよりも巨大で力強い機体。戦闘に特化したディセプティコン。しかも破壊大帝だ。彼はメガトロンなのだ。間違いなく敵のはず。
けれど、顔を白い胸元に寄せればしっかりと聞こえて来るスパークの鼓動に胸が熱くなる。
もっと聞きたくて甘えるように擦り寄ると、頭上から苦笑するような声が下りて来た。

「まるで本当に犬のようだな」
「…こんな風にしたのはお前のせいだろう?」
「確かに」
「なぁ、そろそろこの首輪を外してくれないか?」
「ダメだ。お前は我のものだからな。首輪は所有の証よ。勝手に外したら保健所に連行されかねん」
「…だから犬じゃないって」

ククク…と含み笑うメガトロンを精一杯睨み付けるが効果は薄いようだ。それどころか頭をわしゃわしゃと撫でられたり喉元を擽られるで完全にペット扱いだった。
ちょっとムッとしたオプティマスがメガトロンっと抗議するように見上げたら、また彼は高笑いを上げた。
しかも、

「うわっ」

今度はがっしりと両腕で抱き込むと頭の上に顎を乗せてしまう。より密着する体制に少し驚いたが、オプティマスは少し恥ずかしそうに身を捩るだけで抵抗する気はもはや無い。
しばらく無言のまま穏やかな時間が過ぎてゆく。
仲間が今の自分を見ればとても信じられない光景だろうとオプティマスは思う。
特にセンチネルやウルトラマグナスはどう思うだろう。
やはり私を裏切り者だと罵るだろうか?
オートボットとディセプティコンが和解するなど絶対に不可能だとーー
なら、彼は。
私をどう思っているのだろう。

「………」
「どうしたオプティマス?」
「メガトロン…お前はどうしてその…私にこんな事を?」
「さっき言っただろう、お前は我の」
「私はオートボットだっ」

悲しみを含んだ声をメガトロンに投げる。
驚いたように押し黙る破壊大帝を見上げながらオプティマスは言葉を紡いだ。

「…今までの歴史の中でディセプティコンとオートボットが共に在った話は聞いたことがない」
「ああ、確かに我も聞いた事がないな」
「お前は私が生まれる前からずっと戦い続けていたんだろう?遥か昔からずっと、今まで」
「…いちいち覚えておらぬわ。我は振り返らない男だからなァ。しかしィ、要するに何が言いたいのだオプティマスよ…何故そんな辛そうな顔をする?」
「…私達は敵同士だが、今のメガトロンなら分かり合えるんじゃないかと願ってやまない。お前さえ望むなら、私を貰ってくれ」
「なっーーー」

真剣な眼差しで縋るオプティマスを見下ろすメガトロンは絶句する。
彼の澄み渡るエメラルドグリーンの瞳(カメラアイ)が心なしか揺れ動いている。

「だから…その代わりに」
「オプティマスよ。貴様はまさか己を人身御供にこの戦争を止めろと抜かすのではなかろうなァ」
「………っ」
「図星か」
「だ、だがお前は私を求めているからこんな事をっ」
「半分合っているが、半分間違っているぞ。ディセプティコンとオートボットは分かり合える、か。我は確かにお前が欲しいが今の戦争とは何の関係もない。誤解があるようだから言わせてもらうが、お前が己を犠牲にしてまで和平を結ぶなどおかしな話よ。この戦争の根本的な原因はもっと根深く歪み澱んだ汚泥のようなものだ。それはお前が生まれる遥か昔から積み上げられた原罪だ。そんな争いがたかがオートボット一人の身で終わるはずなかろう。何よりあのウルトラマグナスがそれを許すとは思えん。お前は本当にそれでいいのか?」
「それは………」
「迷いがあるな。無理もない。お前はまだ若い…我やウルトラマグナスとは違う何も知らぬ若輩者ーー」
「そんなことっ………!」
「ああ、その無謀さすら愛おしいぞ。哀れな程にな。可哀想なオプティマス・プライム…」
「んっ…」

そっと唇を塞ぐメガトロンの優しい仕草が針で刺されるようにスパークを苛む。
こんなに近くに在るのに、触れ合えるのにお互いの立場が邪魔をする。メガトロンは若さ故の自暴自棄な身売りよと哀れむが、オプティマスとて自己犠牲に酔って言った訳ではなかった。
仮にもプライムとして自分の考えがいかに甘く幼稚なものか思い知る。現実は理不尽で残酷だ。そんな事で戦争が終われるならどんなに幸せだろう。
けれど、本当はただ純粋に彼の側にいたかった。
自分を激しく求めてくるこの男がいつの間にか好きになってしまった。
愛してしまった。
それだけだから。

「メガトロン、メガトロン………」
「今だけは我を見ろォ…戦争などこの部屋には関係無い。オプティックセンサーを閉じて受け入れよ。お前と一つになるためにィ」
「うん…何度でも受け入れるから。メガトロンが欲しい…」

そのままベッドに雪崩れこむ二人はまたお互いを激しく求め合う。

あいしてる

と、先に言ったのはどっちだろう?


5



目次 MAIN




×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -